久保建英、「常に1対複数」を突破できるか 月間MVP獲得も厳しいマークの洗礼 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

【現地紙の評価は「バッドゲーム」】

 そうしたディテールがないことで、久保は孤立した。

 久保は何度か右サイドでボールを受け、仕掛けを試みている。しかしアトレティコは5-3-2の堅陣を組み、リノが縦のコースを切り、デ・パウルが中への通路を断ち、さらにエルモソがカバー。久保は常に「1対複数」での勝負を余儀なくされていた。

 前半アディショナルタイム、久保は再びハイプレスに活路を見出す。足技が得意でないGKヤン・オブラクを脅かすような寄せを見せ、交錯する形で倒される。笛は鳴らず、微妙な判定だった。

 そして前半終了間際、久保は右サイドでボールを受ける。そこで、この試合で初めて味方のブライス・メンデス、ミケル・メリーノ、マルティン・スビメンディがいっせいに相手ゴールに向かって走り出し、わずかなスペースが生まれる。すかさず中へ切り込み、ファーサイドで一瞬フリーになったミケル・オヤルサバルに絶好のクロスを合わせたが、シュートはバーを越えた。

 後半の54分にも、久保は味方のパスを受け、初めてエリア内でボールを持って勝負を挑んでいる。対峙するディフェンスはいたが、わずかにコースを作ってシュートを打ち込むも、ブロックに遭った。百発百中で決めるのは難しい。

 そして65分、久保はカルロス・フェルナンデスと交代でピッチを去っている。

「バッドゲームだった。久保はマンマークを受け、常に1対2の状況になっていた。ほとんど動きが取れなかったが、それでもオヤルサバルへのクロスは、"半分ゴール"だった」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』の寸評である。

 久保は日本代表のドイツ戦、トルコ戦後、消耗の激しい試合を続けている。敵地でのレアル・マドリード戦、チャンピオンズリーグ(CL)開幕戦のインテル戦、古巣であるヘタフェ戦、バスクダービーのアスレティック・ビルバオ戦、CLザルツブルク戦、そして強豪アトレティコ戦。この間、バレンシア戦はターンオーバーで休んだが、密度の高い試合を重ねている。

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