三笘薫が見せたS級プレー ブライトンは経験不足を克服して欧州戦線に踏みとどまれるか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by REX/AFLO

【相手を手玉に取るフェイント】

 これを三笘はトップスピードで受けるや、CBシャンセル・エンベンバ(コンゴ代表)に身体を寄せられるも、左足でシャープなインステップを枠内に蹴り込んだ。相手GKパウ・ロペス(元スペイン代表)の好セーブに遭い、得点こそならなかったが、まさに欧州のAランクに値するプレーと言えた。

 だが5分後、三笘はさらにその一歩上を行くSランクと言いたくなる超高級なプレーを披露した。左サイドの高い位置で、アンス・ファティと交代で入ったジョアン・ペドロ(ブラジルU-23代表)からボールを受けるや、対峙する相手の右SBジョナタン・クラウス(フランス代表)に突っかかっていった。

 ドリブルに入った瞬間から三笘はノリノリで、ツボに入っているという感じだった。何かしらのマジックが飛び出すことは読めていたが、実際のプレーはこちらの想像を凌駕した。内に行くと見せかけてグイと縦方向に舵を切る、深々とした切り返しだ。まさに180度方向変換するコンパスのようなフェイントを、簡単に繰り出せる選手はそういない。特別天然記念物に推したくなる絶品のアクションだった。

 驚いたように身体を裏返しにさせられることになったクラウスの反応に、それは集約されていた。これまでのサッカー人生でも、最も手玉に取られたフェイントだったのではないだろうか。

 マルセイユサポーターしかり。その熱狂的なゴール裏サポーター席の目の前で起きた出来事に目を丸くしたはずである。

 ブライトンは後半43分、PKをゲット。土壇場で2-2の引き分けに持ち込んだ。エリア内をドリブルで突いたランプティを迂闊にも引っかけたのは右SBのクラウス。その反則行為は10分前、三笘にマジックをかけられた後遺症だったと見る。

 ブライトンにとって幸いだったのは同じ組(B組)の別カード、AEKアテネ対アヤックスが1-1の引き分けに終わったことだ。トップの勝ち点は伸びなかった。

 第2節を終了して、順位は以下の通り。

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