三笘薫がEL初戦で見せた完璧な折り返し だがブライトンは挑戦者になりきれなかった (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Sebastian Frej/MB Media/Getty Image

【アンス・ファティの起用法に注目】

 三笘の勢いは止まらない。

 その1分後、相手は2人がかりで来た。シディベと右ウイング、ノルディン・アムラバト(モロッコ代表)が迫ってきたが、緩急をつけたドリブルながら、ほぼノーフェイントで真っ直ぐ縦に抜き去ったのだ。ライン際から左足で中央に送ったマイナスのセンタリングはGKにキャッチこそされたが、芸術的と言いたくなる球質だった。マーカー2人をこれほどまでに楽々とかわし、完璧な形で折り返すことができるウイングは世界に何人いるだろうか。

 後半、試合はブライトンペースで進む。後半22分、ジョアン・ペドロが再び自ら獲得したPKを蹴り込み、2-2とした。

 こうなったら、ブライトンはさすがに負けることはないだろうとの読みは甘かった。ギリシャリーグというランク20位の裏街道から、ELという欧州の晴れやかな舞台を踏んだ選手たちのプレーには、喜びが溢れていた。

 決勝ゴールを挙げたのは、交代で入ったエセキエル・ポンセ。アルゼンチン代表歴がない26歳のゴールで、ブライトンは2-3に沈んだ。

 ブライトンの敗因をあえて挙げるなら、守備を統率するルイス・ダンクを欠いたことと、1トップ下で起用されたアンス・ファティが嵌まらなかったことにある。全体的にチャンスの回数が少なかった理由だ。三笘がいまひとついい形でボールを触れなかった理由でもある。

 アンス・ファティの適性は左ウイングにあるのではないか。だが、左には三笘がいる。この日、後半41分、三笘と交代で左ウイングに入ったサイモン・アディングラも控えている。ロベルト・デ・ゼルビ監督の今後の起用法に注目したい。 

 シュトルム・グラーツ(オーストリア)と対戦した守田英正所属のスポルティング(ポルトガル)は、こちらも先制点を奪われる苦しい展開だった。ポルトガルリーグでこれまで5試合すべて先発を飾っていた守田は、ディオゴ・アモリム監督が相手を格下と見たのか、ベンチスタートとなった。スポルティングに逆転弾が生まれたのは、守田が投入された直後で、すなわち彼は勝利に貢献したことになる。リバプールの遠藤とは対照的なだった。

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