鎌田大地につけられた愛情溢れるニックネーム 初ゴールはネドベドを彷彿

  • フランチェスコ・ピエトレッラ●文 text by Francesco Pietrella
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

 イタリアに来て以来、ローマの街を回る時間さえもなかった鎌田大地が、イタリア王者のゴールに左足からのシュートを叩き込んだ。このゴールのおかげで鎌田大地には新しいニックネームがつけられた。「Daje'ci(ダイエ・チ)」だ。「Daje(ダイエ)」とはローマ弁で「がんばれ」とか「行け!」の意味。一方「ci(チ)」は親しみを込めて相手に呼び掛ける時に使う。つまり鎌田大地はここローマで、「鎌田ダイエ・チ」になったのだ。

 土地の言葉でニックネームをつけられたということは、すでにラツィアーレ(ラツィオサポーター)に受けいれられたということ。これはとても大事なことだ。なぜならローマっ子は一度気に入ったら、とことん贔屓するからだ。人々は鎌田がスタジアムから出てくるたびに彼の肩を叩き、道で出会えばクラクションを鳴らす。こうした行動はすべて、ひとつの言葉に集約される。愛情??それも心の底から自然に湧き上がる愛情だ。

 鎌田は数試合で人々の心に入り込んだ。最初のレッチェ戦、ジェノア戦は少し遠慮がちだったが、ナポリ戦では突然、偉業を成し遂げた。角度のある左足のシュートは、20年前にパベル・ネドベドがローマ戦で決めたゴールを彷彿させると話題になった(ネドベドは1996年から2001年までラツィオでプレーしていた)。

ナポリ戦で初ゴールを決めた鎌田大地(ラツィオ)photo by PA Images/AFLOナポリ戦で初ゴールを決めた鎌田大地(ラツィオ)photo by PA Images/AFLOこの記事に関連する写真を見る 鎌田のゴールは、背番号10のルイス・アルベルトのおかげもあって生まれた。彼がフェリペ・アンデルソンからのボールをスルーし、うまく鎌田の目隠しとなったことは大きかった。そのルイス・アルベルトはこの日のラツィオの1ゴール目をヒールで決めた立役者でもあったが、試合後、鎌田のゴールについて聞かれると、カトリックの国(彼はスペインの出身だ)の人間らしい表現でこう答えた。

「彼のゴールは僕が決めたものよりもずっとずっと難しかったよ。まるでマドンナ(聖母マリア)みたいなゴールだった!」

「マドンナ」とは、何か驚くべきことを成し遂げた時に我々が引き合いに出す言葉だ。つまりルイス・アルベルトは暗に、8シーズンで69ゴールを決めたセルゲイ・ミリンコヴィッチ・サヴィッチの抜けた穴を、鎌田が十分埋められると示唆しているのだ。彼の後継者というポジションは非常に重いものだが、鎌田はその荷を堂々と受け止めている。

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