鎌田大地が得たチームメイトからの信頼 ラツィオ番記者が明かす開幕直前の日々

  • フランチェスコ・ピエトレッラ●文 text by Francesco Pietrella
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

 鎌田大地を知らない人に、一枚の絵ハガキで彼を説明するとしたら、表の写真は彼のラツィオでの初ゴールになるだろう。裏に書かれている文章はこんな感じだろうか。

「気温30度以上のなかで行なわれたラティーナとの親善試合。後半、ラツィオはすでに5-0で勝っていた。先発した鎌田大地は後半、ラツィオでの初ゴールとなる6点目のゴールを決める。ゴール前に上がり、左足のボレーで決めたものだった」

 暑さに負けずにスタンドにいたサポーターも、テレビで観戦したサポーターも、このゴールを気に入った。彼らはSNSに「こいつ、悪くないじゃないか!」「やってくれそうな予感!」などと書き込んだ。スタディオ・オリンピコでの初戦で歌えるように、すでに鎌田チャントを作り始めた者もいた。

プレシーズンマッチでゴールを決めた鎌田大地(ラツィオ)photo by PA Images/AFLOプレシーズンマッチでゴールを決めた鎌田大地(ラツィオ)photo by PA Images/AFLOこの記事に関連する写真を見る 鎌田は、その仕事の流儀、自己犠牲の精神、相手をリスペクトする作法、すべてでラツィアーレ(ラツィオファン)の好意を獲得している。移籍してきたばかりの選手は、家探しをはじめとする煩雑な用事に追われ、当初は練習を休みがちだ。しかし鎌田は違った。初めて練習に合流したのは8月9日、チームがヨーロッパツアーから戻ってきて、最初にフォルメッロ(ラツィオの練習場)で練習を始めたその日からだった。一日も早くマウリツィオ・サッリのメカニズムに慣れたいという気持ちの表れだろう。

 そしてそれが8月13日のラティーナ戦での初ゴールにつながる。また彼はこの試合で何度も相手DFを翻弄し、スタンドを沸かせた。ゴールの20分後には、チーロ・インモービレのパスを左アウトサイドで狙ったりもした。こうした親善試合ではアイデアが重要だ。右のサイドハーフとして起用された鎌田は、その点でもすでに自分の居場所を見つけたようだった。

 サッリは口数の少ない監督だが、ピッチで起こったことはすべて記録している。キックオフ20秒後くらいで、すでに何かを彼の"聖なる"メモ帳に書き込んでいる監督の姿がテレビカメラに抜かれることも多い。ラティーナ戦でもそれは変わらなかった。サッリは大地について何を書き込んだのだろうか?

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