中井卓大は試練をくぐり抜けられるか リーガ3部のクラブに移籍する意味とは (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【プロ選手としては失格のレベルだった昨季】

 2022-23シーズン開幕時、中井はカスティージャに意気揚々と昇格し、「飛躍の年に」と期待されていた。

 2022年4月のスペイン国王杯ユース大会決勝で、中井は後半途中に出場し、見事な決勝点を突き刺している。GKの頭上を抜く一撃で、ワールドクラスの香りが漂った。正念場で勝負を決める得点だっただけに、常勝レアル・マドリードの精神においては評価を高めるプレーだったのだ。

 ところが昨季、中井は3部リーグでほとんど出場機会を得られていない。わずか2試合の出場に終わり、それもトータルプレータイムは5分間だった。プロ契約選手としては失格のレベルだ。

 もっとも、当初から「好選手だが、カスティージャで先発メンバー入りは簡単ではない」という予測はあった。

 同じポジションには、セルヒオ・アリーバスのように、いつでも1部のクラブでプレーできる成熟した選手がいた。事実、アリーバスは昨シーズンの活躍で、6年契約、移籍金700万ユーロ(約11億円、50%のパスはレアル・マドリードが所有)で1部アルメリアに新天地を求めている。他にもトップ下争いではアルゼンチンU-20代表の左利きの18歳、ニコラス・パス、ジネディーヌ・ジダンの息子で21歳のテオ・ジダンがいた。ボランチではマリオ・マルティン、カルロス・ドトール、ハビ・ビジャールなどスペインの新鋭たちがひしめいていた。

 中井の理解者だったはず(ユース時代には飛び級で抜擢した)のラウル・ゴンサレス監督が、5-4-1という手堅い布陣を選んだことで、攻守の強度が優先されたのも逆風になったか(結局、今シーズンの構想からも早々と外されていた)。

 その意味で、中井が同じマドリード郊外にある3部クラブで再戦を挑む(昨シーズン14位で、カスティージャとは同じリーグではない)という決断は、あらゆる点で理にかなっている。昨シーズンの成績を考えれば、2部で出場機会を得るのは単純に難しいだろう。そうなればレンタルの意味はなくなる。実戦から離れていたことでU-20W杯の代表メンバーから外れてしまったように、ユース年代では特にプレーする場が必要なのだ。

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