鎌田大地をラツィオが獲得した理由 「ここ15年で最高のMF」の後継者になれるか (2ページ目)

  • マルコ・パソット●文 text by Marco Pasotto
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

【躍進の原動力だったミリンコヴィッチ】

 鎌田はこうした一連のミランの動きを残念に思ったかもしれない。一時期、彼のミラン入りはほぼ決まったも同然だった。しかしその後、多くのチームが口説いてくるなか、最終的にラツィオに決めたのは、チームが彼を納得させるだけのプロジェクトを持っていたからだろう。鎌田はラツィオにとっては初の日本人選手となる。ラツィオは彼にとって新しい水平線を切り開いてくれるはずだ。

 ラツィオで鎌田は、何にでも役立つ「アーミーナイフ」のように使われるのではないかと思う。相手のDFを混乱させ、ゴールへの道をこじ開け、またカバーリングにも貢献する。彼はサウジアラビアのアル・ヒラルに行ってしまったセルゲイ・ミリンコヴィッチの後釜だ。だが「新ミリンコヴィッチ」と呼ぶには少しスタイルが違う。

 鎌田のプレーはミリンコヴィッチのそれよりもより整然としていて、クリーンで、リスクを冒さずとも同じような効果を発揮することができる。フィジカルもテクニックもあり、ミリンコヴィッチより多くのことをこなせる器用さもある。ただ、少なくとも「ここ15年で最高のMF」と言われていたミリンコヴィッチの後を継ぐのは簡単なことではないだろう。ミリンコヴィッチは2015年にラツィオに加入して以来、300試合以上に出場し69ゴールを決め、最近のラツィオ躍進の原動力のひとりだった。

 また、マウリツィオ・サッリは要求の多い細かい監督で、特に気心が知れないうちは選手にとっては難しい。現在のチームの中心であるルイス・アルベルトも、監督の意向を100%理解するまでの数カ月間、困難な時期を送っている。ただ、一度理解し合えたら、決してその手を離さない。鎌田はサッリにとっては理想的な選手だろう。

 昨シーズンの鎌田のヒートマップを見ると、彼はピッチのあらゆる場所に出没している。ラツィオでは重宝されるだろう。もうひとつ興味深いデータがある。ミリンコヴィッチは昨シーズン11ゴール、10アシストだったが、鎌田は16ゴール、7アシスト。数字上は遜色ない。

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