鎌田大地をラツィオが獲得した理由 「ここ15年で最高のMF」の後継者になれるか

  • マルコ・パソット●文 text by Marco Pasotto
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

 口説くのにあまりにも時間をかけすぎると、いい終わり方をしないのは恋愛でもサッカーでも同じだ。新しいクラブに近づいたと思われた選手が、別のクラブに移籍することもある。鎌田大地の場合もまさにそうだった。ただ、それが彼にとって「よかった」のか「悪かった」のかはまだわからない。

 同じイタリアでも、ミランとラツィオでは取り巻く環境は大きく異なる。ロッソネロ(赤と黒)のミラン、ビアンコチェレステ(白と水色)のラツィオ。経済の中心ミラノと政治の中心ローマ。しかし同じように刺激的なチームであることは確かだろう。どちらのクラブも新シーズンのチャンピオンズリーグに出場する。つまり鎌田はヨーロッパで最も権威のある大会でプレーすることができるのだ。

ラツィオの練習に参加した鎌田大地とマウリツィオ・サッリ監督 photo by Marco Rosi - SS Lazio/Getty Imagesラツィオの練習に参加した鎌田大地とマウリツィオ・サッリ監督 photo by Marco Rosi - SS Lazio/Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る それにしても、ほぼ移籍が決まったと思われていたミランとの間には、いったい何が起こったのか。ミランの補強を担当していたパオロ・マルディーニが、鎌田を気に入っていた(しかもかなり)のは確かだ。移籍金はかからないし、ステファノ・ピオリ監督の4-2-3-1ではいろいろなポジションもこなせる。リーグ終了直後には、メディカルチェックの日程調整まで話が進んでいた。

 だがその後、マルディーニとミランのオーナー会社レッドバードが決別。ミランは鎌田への興味を失ったわけではなかったが、鎌田は一種のスタンドバイ状態に置かれることになった。つまり、ミランの他の補強状況によって、彼をどうするかが決まるというわけだ。

 ミランがこの夏、何よりも必要としていた補強ポジションはふたつ。右のサイドアタッカーと、オリビエ・ジルーの脇を固めるもうひとりのCFだ。ただ、これらのポジションにミランが獲得に乗り出した2人の選手は、鎌田同様EU外の選手、ナイジェリア人のサムエル・チュクエゼとイラン人のメフディ・タレミ(現ポルト)だった。だが、ミランにEU圏外選手の枠はひとつしか残っていない。この時点で鎌田の獲得はミランにとって優先事項ではなくなり、そして実際にチームはチュクエゼを獲得した。

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