久保建英は救世主になれるか レアル・ソシエダは主力2人の離脱でいきなり苦境 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【復活する選手や若手の台頭も】

 18分には左サイドバックで左利きのディエゴ・リコからのボールを右で受けると、抜群のコントロールでシュートポジションに置き、相手を跳び込ませず、左足で際どいシュートを放った。31分にはやはりカットインし、中央のウマル・サディクへスルーパス。これは流れたが、新相棒予定のナイジェリア代表FWと呼吸を合わせていた。

 32分には右サイドで相手2人を引きつけ、エリア内に入ったロベルト・ナバーロに通し、45分にも左足クロスをエリア内のベニャト・トゥリエンテスに通したが、ヘディングはうまく当たらなかった。

 久保は前半で退くことになったが、攻撃のリーダーになっていた。プレシーズンマッチとしては順調な出来だろう。暗いニュースが続くチームで、朗報と言えるはずだ。

 チームとしても、実はそれほど嘆くような現状ではない。

 サディクが、右膝前十字靭帯断裂から11カ月ぶりに実戦のピッチに立ったことは明るいニュースだろう。昨シーズン途中で左膝前十字靭帯断裂から復帰後、試合勘の鈍さで不調だったオヤルサバルも、完全復活が近づいている。そして昨シーズンはケガに悩まされたモハメド・アリ・チョも久保と代わって出場し、スポルティング戦では何度もゴールに迫っていた。

 戦線離脱者がいる一方、復活の狼煙を上げつつある選手もいるのだ。

「急いではいけない。チャンピオンズリーグがあるからと言って、それだけのために右往左往せず、今後10年の成長を目指すべき。我々は若い世代の台頭を信じています」

 ホアキン・アペリバイ会長の言葉は本音だろう。

 イマノル・アルグアシル監督は、もともと人材を最大限に生かす手腕に優れている。下部組織スビエタの有望選手も控えているだけに、長いシーズンを考えた場合、心配はない。U-21欧州選手権準優勝メンバーになったアンデル・バレネチェア、ジョン・パチェコは確実に戦力を引き上げるはずだ。

 ただし、ダビド・シルバ、セルロートの不在は事実である。復帰したばかりのサディクのプレーは不透明で、チャンピオンズリーグ開幕も含めたシーズン序盤をどのように乗りきるかは課題になる。

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