ハーランドの移籍を成功させたスゴ腕の女性も 移籍市場を牛耳ってきたサッカー界の代理人の勢力図が変貌 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【ミノ・ライオラの死とFIFAの新ルール】

 有力代理人たちがサッカー界を牛耳ることを、以前からFIFAは快く思っていなかった。ご存じのとおり、FIFAはすべての主導権を自分たちで掌握したい組織だ。そこでスーパーエージェントたちの力を制限しようとする試みが何度も行なわれてきた。たとえば2015年には、誰でも代理人業ができるようライセンス制を撤廃したりもした(結局それは「間違いだった」として、またライセンス制が復活するのだが)。

 そして今、新たなルールが打ち立てられた。

 昨年4月、ミノ・ライオラが54歳の若さで亡くなった。彼の死を受けてFIFAが新ルールを作ったというわけではないが、それでもきっかけのひとつではあったと思う。ライオラはFIFAに逆らう代理人勢力の急先鋒だったからだ。

 ライオラは、FIFAが代理人の権利を制限し、自分たちにより金が入るよう構造を操作していると裁判を起こし、弁護士を立てて争った。国際的スーパーエージェントの集団「ザ・フットボール・フォーム」を作り、FIFAの権力に真っ向から挑んだりもしていた。だがもう、少なくともそんなライオラを向こうに戦わずに済む。FIFAは昨年末に、新サッカーエージェント規定(FFAR)を理事会で承認し、2023年1月に発布した。

 この新ルールで、FIFAはまずこれまで不透明で天文学的な額だった代理人のコミッションにメスを入れた。代理人が売り手クラブを代理する場合は移籍金の最大10%、選手か買い手クラブのどちらかを代理する場合は報酬の最大3%、両方を同時に代理する場合は最大6%までを請求できるとした。また売り手クラブ、買い手クラブ、選手の三者すべての代理人を同時に務めることは禁止された。これにより多くのクラブは安堵のため息をついたことだろう。また透明性を保つため、金銭のやりとりはすべてが銀行などの機関を通すことも盛り込まれている。

 もうひとつFIFAが制限したのが、資格のない選手の親族などが代理人となることだ。リオネル・メッシの父、ネイマールの父、キリアン・エムバペの母など、世界のトップクラスの選手にもこうした例は多い。選手の25~30%は家族が代理人をしているという統計もあり、多くは南米やアフリカの出身選手だ。貧しい国では家族で全てを分け合うのが当たり前だからだ。

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