「暴動はいつ起きても不思議ではない」インドネシアのサッカーリーグで活躍 初の優勝を経験した日本人選手の苦労「成功するのは難しい」 (2ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • photo by Nanbu Kenzo

【暴動がいつ起きても不思議ではない】

「アジア枠の自分のほか、3枠の外国人はオランダ、ブラジル、ポルトガルの選手でした。ポルトガルの選手は198センチの長身DFで、オランダ人とブラジル人の選手が2トップ。オランダ人FWのウィリアム・プライムは、もう7年もPSMでプレーしていて、昨季はチームトップの11ゴールを挙げて、自身2度目のリーグMVPを獲得しました。

 一方、もともとFWの僕は、3ボランチの一角で犬のように走り回っていたというか(笑)。31試合に出て9点はとれましたが、カウンター主体の戦術で基本守備に回る時間が多くて......。ほとんどの試合で先発したものの、終盤に途中交代させられることが多かった。点がほしい時は自分に代えてFWが、守りたい時は自分に代えてDFが投入されるなど、個人的には歯痒さも残りました」

 優勝はうれしいが、南部にとっては悔しさや課題も残ったシーズンだったのだろう。

 FIFAランキングは日本の20位に対し、インドネシアは149位(2023年4月6日時点)。ACLなどの出場枠に関わるアジア各国のリーグレベルを示すひとつの指標であるAFCクラブコンペティションランキングでは、日本の2位に対し、インドネシアは26位(2022年)と下位に低迷する。ただ、5月に行なわれたの東南アジア競技大会(シーゲームス)でU-22インドネシア代表が決勝でタイを下し32年ぶりに優勝するなど、インドネシアサッカーはいま勢いを取り戻しつつある。

優勝パレードでトロフィーを掲げる南部健造優勝パレードでトロフィーを掲げる南部健造この記事に関連する写真を見る 経済成長も著しく、近年インドネシアでサッカーは国技のバドミントンを超える人気ぶり。サポーターの熱狂度は、ドキュメンタリー映画(邦題『狂気と暴走 インドネシアサッカーの苦悩』)になったほど高いことで知られる。

 昨年10月には約4万人の観客を集めたリーグ戦で、結果に納得がいかない一部の暴徒化したサポーターが試合後グラウンドに乱入。130人以上が将棋倒しになるなどして亡くなったという事故も起きている。南部は、現地の状況についてこう話す。

「サポーターはすごく熱狂的で、正直、暴動はいつ起きても不思議ではない、という感じでした。PSMのホームスタジアムのキャパは約2万人ですが、常に満員で、なかにはチケットが手に入らず柵などをよじ登って入って来てしまうサポーターもいたみたいですから。首都のジャカルタやバリ島にも数万人を収容できるスタジアムがありますし、僕もここまで盛り上がっているとは知りませんでした」

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