W杯優勝メンバーが元チームメイト、強盗に銃を突きつけられたことも... アルゼンチンでプロ契約した日本人が語るサッカー大国のリアル (3ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • photo by Goto Kou

【国民はサッカーのために生きている】

「外国人選手はアルゼンチン人選手以下、というのが基本ですから。もちろん、実力だけが理由ではないですが、リーグ自体にもコロンビアやパラグアイなど隣国の選手はいても、外国人選手は少ない。

 日本人選手? 僕の知る限りではいまプロでやっている選手はほかにいないと思いますし、こっちに来て日本人選手のいるチームと対戦したことはないです。ただ、僕的にはそれがいいっていうか。たとえば欧州だと日本人選手がたくさんいるリーグもあると思いますが、海外まで行って日本人選手と試合したくないじゃないですか(笑)」

 ピッチでは激しいバトルの連続。環境も決して恵まれているわけではない。ただ、下部リーグでもスタンドには多くの地元サポーターが集まり、その熱狂はほかでは味わえないのがアルゼンチンの魅力だと後藤は言う。

「3部だったアルミランテはだいたい2万から2万5000人くらい、4部のメルロでも1万人くらいは毎試合、入っていました。アルゼンチンは経済的に豊かではないですが、労働者はみんな週末の試合のために平日、働いています。優勝した昨年のカタールW杯でも、観戦に行く資金がないのに、家や車を売ってまで現地に行く人がたくさんいたって聞きましたが、そんな国、ほかにありますか(笑)。シンプルにアルゼンチンでは国民がサッカーのために生きているし、サッカーが生活に染みついているんです」

 ちなみに、昨年のW杯でアルゼンチンの優勝に貢献し、2022-23シーズンは英プレミアリーグのブライトンで日本代表の三笘薫とプレーしていたMFアレクシス・マクアリスター(現リバプール)は、後藤がアルヘンティノスのユースチームに在籍していた頃のチームメイトでもある。

「あのあとボカに移籍した時も頑張っていましたが、まさかW杯でメッシと一緒に優勝するとは......。うまかったけど、当時はそんなに目立ってなかったんですけどね(苦笑)」

 アルゼンチンでは基本4部以上がプロとされる。後藤はこれまで5部、6部、7部を含めた下部リーグでもプレーしてきただけに、苦労は少なくなかったはずだ。それでも、アルゼンチンに渡ったことは「すべてがよかった」として、こう続けた。

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