オランダ代表が伝統の「4-3-3」に戻したら...アヤックス勢に頼らず、リベロを置き、ハードワーカーを起用して生まれ変わった (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

【オランダ代表の新たな武器】

 今季、フェイエノールトのリーグ優勝に多大な貢献を果たした22歳のヘールトライダは、右SB、CB、MFをこなす多機能プレーヤーだ。1対1、フィード、スピード、戦術実行力......そして秘めた闘志も高く評価されている。

 クーマンのような攻撃での爆発力やストーンズのような余裕の振る舞いは、ヘールトライダは持ち合わせていない。それでも「リベロ」ヘールトライダはクロアチア戦でのキーファクターになった。

 そしてもうひとり、クロアチア戦でカギとなった選手は、今季フェイエノールトに移籍してきた23歳のウィーファーだ。昨季までオランダの小クラブ・エクセルシオールに所属していた無名のMFは、フェイエノールトでレギュラーポジションを掴み、3月の国際マッチウィークでクーマン監督に大抜擢され、ユーロ予選・ジブラルタル戦(3-0)で代表デビューを果たした。

 ウィーファーはピッチ狭しと走り回り、シンプルにボールをさばくことで味方を輝かせるタイプのMF。クロアチア戦の前半もシンプルなプレーでチームを牽引し、マレンの先制弾をアシストするなどオランダのベストプレーヤーだった。

 しかし、クロアチアの誇るMFはオランダのMF陣より、一枚も二枚も上手だった。しかも、クロアチアはフィールドプレーヤー全員が流動的に動き、地上戦でオランダを圧倒した。

 一方、オランダは3月のフランス戦での惨敗を受けて、これまでマジョリティだったアヤックス勢からFWステーフェン・ベルフワインとDFユリエン・ティンバーのふたりしか招集しないなど、チーム内をリフレッシュさせている最中。後半のアディショナルタイムに2-2に追いついたFWノア・ラングの同点弾にはチームスピリットの高さも感じさせた。

 クロアチアの勝利は正当な結果----それが、オランダメディアの評価だ。しかし、ヘールトライダがリベロとして中盤に加わり、ウィーファーがハードワークでピッチを走り回った前半のプレーモデルは、今後のオランダのチームビルディングに生かされていくだろう。

プロフィール

  • 中田 徹

    中田 徹 (なかた・とおる)

    スポーツライター。 神奈川県出身。オランダを拠点に、2002年よりサッカーを主に取材。オランダスポーツジャーナリストクラブ会員。

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