オランダ代表が伝統の「4-3-3」に戻したら...アヤックス勢に頼らず、リベロを置き、ハードワーカーを起用して生まれ変わった (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

【黄金トリオにどう対抗した?】

「世界一の中盤」「黄金のトリオ」と評されるモドリッチ、マテオ・コヴァチッチ、マルセロ・ブロゾヴィッチで構築される中盤を軸に、クロアチアは後半から試合終了までの75分間、オランダを圧倒した。質のともなったクロアチアの強さに、クーマン監督は「ワールドカップで3位という成績は伊達ではなかった」と兜(かぶと)を脱いだ。

 それでもキックオフから45分間、オランダが披露したサッカーも新鮮味にあふれていた。前半34分には大スランプから蘇ったFWドニエル・マレンのゴールで1-0とリードしてハーフタイムに入り、「こんなオランダ代表を見たかった」とファン・ホーイドンクらを唸らせたのだ。今年3月のユーロ予選・フランス戦で0-4と大敗した時のような無様な姿は、もうなかった。

 オランダの布陣は、ワールドカップ時の「3-5-2」からナショナルフォーメーションの「4-3-3」に戻った。クロアチアがボールを持った時には、中盤ではフレンキー・デ・ヨング、マッツ・ウィーファー、トゥーン・コープマイネルスが相手MF陣にマンツーマンでつく。

 その一方でオランダが攻撃に転じると、CBルチャレル・ヘールトライダが一列上がってデ・ヨングとセンターで組み、ウィーファーとコープマイネルスがインサイドMFに上がる。オランダはボックス型のMFを形成することにより、中盤で4対3の数的優位を作っていた。

 これはおそらく、マンチェスター・シティの『ストーンズ・モデル』からヒントを得たものだろう。現役時代のクーマンは「奔放なリベロ」としてダイナミックに攻撃に絡んでいたが、シティが採用したストーンズ・モデルはそれをよりシステマチックにしたものだ。

 シティがボールを保持している時、イングランド代表CBのジョン・ストーンズがMFに上がることによって中盤での数的優位を作り、ネガティブトランジション(相手にボールを奪われた直後、攻撃から守備に転換する短い時間帯)では敵の攻撃の芽を未然に防ぐ役割を果たす。

 その役割を、クーマン監督はヘールトライダに託した。

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