「現代における理想のウィングバック」菅原由勢は五輪落選、負傷、W杯落選を"肥やし"にしてオランダで日本人トップとなった (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

【試合で鍛えた1対1の強さ】

「五輪代表落選、負傷、ワールドカップ代表落選──。その過去とどう向き合い『あの時、落ちて正解だったね』と言えるようになるには、自分が正解にしていく未来しかない。『過去が自分を強くする』と信念を持ってやってきました。

 もちろん、悔しい思いをしました。自分自身に情けない気持ちにもありました。だから『周りを見返してやろう』と、昨季も今季もプレーした。現時点で自分がここまでくることができたのは、過去と向き合って肥やしにしたからです」

「ここまでくることができた」と言った青年は、この日、AZで156試合目の公式戦出場となり、ハーフナー・マイク(フィテッセ、ADOデン・ハーグ)の155試合を抜いてオランダクラブ所属日本人選手としてトップに躍り出た。

 ウイングシステムの国・オランダには、個性豊かな「11番(左ウイング)」が手ぐすねを引いて右SBに襲いかかってくる。そんな厄介なスピードスターやテクニシャンを止めるコツを、菅原は掴んだのだろうか?

「止め方は、今ひとつ正解を見つけ出せてない──というのが正直なところ。PSVのシモンズ選手、アヤックスの(ドゥシャン・)タディッチ選手と(ステーフェン・)ベルフワイン選手、フェイエノールトの(ウサマ・)イドリシ選手といった、強烈な特徴を持つ左ウインガーと試合のなかでやり合う以外、1対1は強くならないと思っています。

 練習で1対1をやることも大事ですが、やはり試合のなかでの1対1はスピード感や状況が違います。試合ですからすべての1対1に勝たないといけません。それでも、トライして挑んでいかなければ掴めないものがある。

 今、完璧である必要はない。次につながるような1対1を毎回、心がけています」

 AZというオランダ屈指のクラブにおいて、菅原は欧州カップ戦出場試合数ランキングで4位(40試合)につけている。「4年もいますからね」と言う菅原だが、4年在籍したところで試合に出なければ、ランキング上位に入ることはできない。

「そうですね。チーム内の競争があるなかで、『絶対にピッチに立つんだ』という気持ちは一度も忘れたことがありません。その積み重ねです」

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