マンチェスター・シティがレアルに圧勝した理由 ヴィニシウスを怖がらず貫いた可変システム (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【象徴的だった先制ゴールのシーン】

 2-0、合計スコア3-1。レアル・マドリードのこれまでの神がかり的な戦いを振り返れば、試合の行方はまだわからなかった。マンチェスター・シティが俗に言われる"2点差の呪縛"にハマるか否かに目を凝らした。

 だが、心配は杞憂に終わる。後半31分にはマヌエル・アカンジ(結果はオウンゴール)が、後半46分(追加タイム)には交代出場のフリオ・アルバレスが3点目、4点目を決め、マンチェスター・シティは4-0(合計スコア5-1)で、昨季の覇者に完勝した。

 勝因は何か。昨季の一戦との違いは何かを考えたとき、たどり着くのは先制点のシーンになる。ロドリ、ベルナルド・シウバ、ストーンズ、ウォーカー、デ・ブライネとつないだボールをベルナルド・シウバが蹴り込んだ攻撃にその魅力、ストロングポイントを見ることができる。

 ロドリからのパスを右の高い位置で開いて受けたベルナルド・シウバは次の瞬間、さらにそれ以上高い位置に走り込んだストーンズにパスを送った。ストーンズはゴールライン近くの最深部でそのボールを受けている。相手ボールに転じた時は、右CBとして構える選手が、である。

 マイボールに転じた時は、守備的MFの位置に上がる4バックと3バックの可変式布陣の長所が全開になった瞬間だった。マイボール時、CBなら立ち位置が低すぎて、ベルナルド・シウバを追い越すことはできないが、守備的MFなら可能だ。

 その時、右の深い位置で、マンチェスター・シティはレアル・マドリードに対し数的優位を作ることができていた。実際、彼らが繰り広げたパスワークに苦しさは伴っていなかった。ボールが奪われにくいサイドの有効性を利用しながら、決定的なパスワークを楽々と、厚かましく行なった。マイボールの際、高い位置に多くの人数を割くことができたのだ。

 この勝利は言い換えれば、レアル・マドリードのストロングポイントであるヴィニシウスを怖がらず、可変式を貫いた産物となる。

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