「あいつにはパスをするな」と言われたFWヴィニシウスは、どうやって「レアルの至宝」になることができたのか (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

【投資金額に見合わないと揶揄】

 昨シーズンに本格覚醒した"白い巨人"の至宝は、チャンピオンズリーグという世界最高峰の舞台で今シーズンも輝きを放ち続け、飛ぶ鳥を落とす勢いで進化を続ける。現在のレアル・マドリードで最も危険な男──と言っても過言ではないだろう。

 本名ヴィニシウス・ジョゼ・パイション・デ・オリヴェイラ・ジュニオール。ミレニアム・イヤー(2000年)の7月12日、リオデジャネイロの貧困地区に生まれたヴィニシウスは、少年時代から脚光を浴びた屈指のクラッキだった。

 しかし、18歳で憧れのレアル・マドリードの門をくぐってからは、決して順風満帆だったわけではない。

 2018年夏、ヴィニシウスは予定よりも1年前倒しでフラメンゴから加入。当初はカスティージャ(Bチーム)に登録された。

 そこでの活躍が認められて、第7節のアトレティコ・マドリード戦でトップデビューを果たす。だが、フレン・ロペテギ、サンティアゴ・ソラーリ、ジネディーヌ・ジダンと監督が次々と代わったそのシーズンはリーグ戦18試合2得点に終わり、4500万ユーロ(約60億円)という投資金額に見合わない選手だと揶揄された。

 その後、ジダン監督が指揮した2019−20、2020−21シーズンは、中心選手として獲得したエデン・アザールの大不振もあって出場時間を増やしたものの、リーグ戦では2シーズン連続で3ゴールのみ。

 そうこうしているうちに、メディアでは売却報道が流れたほか、攻撃の中軸を担うカリム・ベンゼマが試合中に左サイドバックの同胞フェルラン・メンディに「あいつにはパスするな」と話したことがすっぱ抜かれるなど、チームメイトからの信頼が大きく揺らいだ時期も経験した。

 とにかく当時のヴィニシウスは、スピードに乗った時のドリブル突破はワールドクラスだったが、最大の問題は、なかなかネットを揺らすことができないフィニッシュワークにあった。

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