風間八宏が解き明かすレアル・マドリードの「特殊な能力」の正体 シティとのCL準決勝のキーマンはベンゼマ (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

【相手の距離感に合わせて戦える】

「シティは明確な自分たちのかたちを持っているチームですが、レアル・マドリードは、"はっきりしたかたちがない"というかたちを持っているチームです。かたちのない敵と戦わなければならない対戦相手からすると、とても怖いチームだと思います。

 どういうことかと言うと、ボールを握りながら押し込んで攻めるシティのような相手に対しては、自陣でしっかりと守ってゴールだけは割らせないという堅守を誇る一方で、たとえば準々決勝のチェルシー戦のように、レアル・マドリードが相手陣内に押し込んで攻めきることもできる。その両方を実行するための選手を揃えています。

 もちろん、今シーズンのシティも押し込まれていても、しっかり守ってカウンターで仕留めるチームになりましたが、レアル・マドリードはその成熟度がより高く、どんな戦況でもゴールを奪える高い能力を兼ね備えていて、それは昨シーズンの優勝までの勝ち方を思い出してもらえれば、よくわかると思います。

 しかも、レアル・マドリードは相手がどのような距離感で戦っても、まったく問題にしません。縦の距離感が長い場合でもヴィニシウスやモドリッチを筆頭にボールを運べる選手が揃っていますし、クロースの高精度パスという武器もあります。逆に、縦に短い距離感の場合は、ベンゼマとヴィニシウスのコンビネーションプレーをはじめ、パスを回して崩しきることもできます。

 要するに、相手の距離感に合わせることができるという特殊な能力を持っているのが、最大のストロングポイントだと言えるでしょう」

 確かに昨シーズンのレアル・マドリードの勝ち上がり方は驚異的だった。ラウンド16のパリ・サンジェルマン戦は、第2戦の後半途中まで為す術がなかったという状況から、相手GKのミスをきっかけに立て続けに3ゴールを決めて大逆転勝利。アウェーでの第1戦を3-1で勝利していた準々決勝では、ホームでの第2戦でチェルシーに逆転されて敗退濃厚と見られるなか、終了間際に同点に追いついて延長戦で再び逆転に成功した。

 準決勝のシティ戦は前述の通りだが、それら3試合連続のミラクルは、決して運だけでは成し得ない。どんな状況でも、勝利の可能性を残すチームと言える。

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