マラドーナ時代以来33年ぶりセリエA優勝目前「ひとつの生き方」とまで言うナポリ、復活の要因 (2ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by Insidefoto/AFLO

【無名な選手たちだったからこそ】

 ジュントリは選手を獲得する際、才能だけでなく、性格、潜在能力、何よりチーム、そしてナポリという特別な街に適応できるかを長い時間をかけて分析する。また、北部のビッグクラブに比べて財政的に厳しいナポリでは、高額なスターではないことも大事だった。

 現在のチームの中心となっているジョヴァンニ・ディ・ロレンツォ、イルビング・ロサーノ、エリフ・エルマス、ロボツカ、クワラツへリア、オシムヘン、ミンジェらは、いわゆる強豪でプレーしたことはいが、ナポリのために選び抜かれた選手たちだ。また年齢的にも若さと経験がともに揃う理想的な24~30歳の範囲にある。チームの平均年齢は26.1歳だ。

 監督のルチアーノ・スパレッティは、個々のピースをジグソーパズルのようにうまく組み合わせることに長けている。選手を先入観や偏見で判断せず、自分の目でそれぞれの資質を見極め、適材適所にはめ込んでいく。ローマ監督時代にはトップ下として絶対だったフランチェスコ・トッティをセンターフォワードにコンバートしたのを覚えている人も多いだろう。

 細かな指導をすることでも知られている。インテル時代、スパレッティのもとでプレーしたことのある長友佑都は、「体の向きまで指示してきて、めちゃくちゃ細かい」と、その細かすぎる戦術指導ぶりを明らかにしている。こうした細かさは、スター選手たちには時には嫌われ、衝突の原因となることもあったが、無名で名声を求める選手の多いナポリにはぴったりだった。

 クワラツへリアはマラドーナをイメージさせるという理由で「クワラドーナ」という呼び名を与えられ、ミンジェは昨年夏にチェルシーに移籍した「カリドゥ・クリバリを忘れさせてくれた」とサポーターから言われている。ロボツカは「ナポリのイニエスタ」の異名を持ち、トップレベルのプレーメーカーとしての地位を確立した。

 オシムヘンはインタビューで監督のことを「スパレッティは、いつも僕に『ベストを尽くせ』と背中を押し、僕のことを信じてくれている。ハードワークを課してくる時もあるけど、それも全然、苦ではない。なぜなら、それがより成長するためだってわかっているからだ」と、評している。

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