三笘薫がチェルシー戦で披露した「大回転」ドリブル ブライトンは欧州最高のサッカーを見せている (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by PA Images/AFLO

【もしチェルシーに入っていたら...】

 しかし、ひと呼吸置くや、再び後ろ足(右足)にセットしていたボールを押し出すように前進。前後にタイミングをずらされたチャロバーは、置いていかれる格好になった。半泣きになっていたとしても不思議はない、まさしく完敗だった。

 若手の右SBを余裕で抜ききった三笘は進行方向をグイと内側に変え、ゴールラインを深々とえぐる。三笘らしさを十分発揮しながら、右足アウトでラストパスを送り込んだ。

 この三笘の決定的な折り返しを受けたのは、三笘にボールを出したあと駆け上がっていたマクアリスター。リターンを受け狙いすましてシュートを放つも、ボールは右ポスト脇を通過した。

 三笘が挨拶代わりに披露したウイングプレーに触発されたのは、チェルシーの左ウイング、ミハイロ・ムドリクだった。今季、冬の移籍でシャフタール・ドネツクからチェルシー入りしたウクライナ代表の22歳。だがチームがウイングのいない5バックになりやすい3バックで戦う機会が増えたため、出場するか否かは布陣次第となっていた。この日の布陣は4-2-3-1。両ウイングが存在する布陣だった。

 三笘が左サイドでチャロバーを翻弄した6分後だった。ムドリクの自慢はスピードと推進力だ。三笘よりパワフルでもある。大外から真ん中に切れ込むとグイグイとドリブルを開始。いざシュートという段まで漕ぎつけた。だが、ムドリクはクレバーにもシュートを打たず、切り返し気味に中央で構える1トップ下、コナー・ギャラガーへのアシストとなるラストパスを送った。

 先制したのはチェルシーだった。布陣次第で出たり出なかったりするムドリク、さらにはアメリカ代表の右ウイング、クリスティアン・プリシッチを見ていると、三笘はいいチームに入ったとつくづく思う。もしチェルシーに入っていたら、彼らと同じように出番は半分程度しかなかっただろう。5バックになりやすい3バックのウイングバックでは、三笘の持ち味は出ない。カタールW杯で森保一監督が振るった采配がまさにそれだった。

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