三笘薫と久保建英の進化を風間八宏が解説 今後の課題は「マークされてもボールを受ける」「相手の視野から消える動き」 (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

【久保の飛躍のポイントは相手の視野から消える動きを覚えること】

 では、今シーズンからレアル・ソシエダでプレーする久保は、どのような変化を見せているのか。プレーの特徴も含めて、風間氏が解説してくれた。

「まず、久保には相手を翻弄するための技術があります。ボールを体から離さないドリブルが特徴のひとつで、同じ体勢から精度の高いパスも供給できます。そういう意味では、チャンスメイクの部分で自分の能力を最大限に発揮できる選手です。

 さらに、今シーズンからレアル・ソシエダに移籍して、それまでに見られなかった成長を見せていると思います。それは、シュートやゴールが増えていることです。

 特に今シーズンの前半戦は前線(2トップ)を任されていたこともあって、以前よりもゴールに近い場所でプレーするようになりました。それが、ペナルティーエリア内でプレーする回数が増加した最大の理由です。

 もちろん、最近はサイドや2列目など、任されるポジションが少し変わったことによって、ペナルティーエリア内でプレーする回数は減少しています。それによってゴールやアシストがそこまで増えていません。ただ、久保自身が相手にとって危険な場所でプレーできるようになった点に変わりはないので、選手としてひとつ成長したのは間違いありません」

 スペインに活躍の場を移して4シーズン目を迎え、ようやくひと皮むけた印象を受ける久保だが、風間氏は「久保がボールを持った時に周りの選手が動いてくれる。逆に、久保の動いたところにも周りからパスが出てくる」と、新天地レアル・ソシエダと久保の相性のよさも、成長の要因になったと分析する。

 では、このまま久保がさらにスケールアップするためには、何が必要なのか。敢えて風間氏に質問をぶつけてみた。

「今のところ、久保はボールを持ってからプレーする選手なので、なるべく試合中にたくさんボールに触れないと、彼のよさが半減してしまう傾向があります。そういう意味では、ボールを受ける、相手を外す、という技術をもっと覚えていくと、さらにレベルアップできると思います。

 たとえば、現在の久保は相手の前でプレーしていることが多い印象を受けます。よく相手に倒されてファールをもらうシーンを見ますが、それは相手の前でプレーする回数が多いからです。もちろんそれも彼の特徴のひとつだと思いますが、もっとゴールやアシストといった決定機に絡むためには、相手の背後でプレーする回数を増やす必要があります。

 わかりやすく言えば、相手の視野から消える動きを覚えることです。そうすれば、前線の狭い場所でもっとボールを受けられるようになりますし、相手を外すことができるようになると思います。その技術を磨けば、あれだけの技術とセンスを持っている選手なので、もっと相手の脅威になれるはずです。

 逆に言えば、それを覚えていかないと、いくら自分が高い技術を持っていても、相手の嫌がる場所でその技術を発揮できないということになります」

 三笘も久保も、ここまでは順調に日本を代表するアタッカーへと成長することができた。ここからさらに成長を続け、世界を代表するアタッカーへと進化していけるのか。今後も、三笘と久保のプレーから目が離せない。

風間八宏 
かざま・やひろ/1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めつつ、全国でサッカー選手指導、サッカーコーチの指導に携わっている。

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