マンチェスター・シティ、遅攻の理想が凝縮されたサッカーでバイエルンに大勝 CL初制覇が見えてきた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【遅攻の充実度で上回ったマンチェスター・シティ】

 そのサイド攻撃がより充実していたのは、ジャック・グリーリッシュ(左)と、ベルナルド・シウバ(右)を左右に置くマンチェスター・シティだった。ウインガーにしては内寄りに構えたレロイ・サネ(左)、縦へのスピードを追求したキングスレイ・コマン(右)というバイエルンの両ウイングとは、趣を異にした。

バイエルン戦で2点目を決めたベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)バイエルン戦で2点目を決めたベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)この記事に関連する写真を見る サイドの深い位置にボールがスッポリと収まるサッカーのメリットを見せられた試合。この一戦の印象をひと言でいえばそうなる。ベルナルド・シウバとグリーリッシュにボールが渡れば、そこは攻撃の拠点となった。両翼いっぱいに開いて構える両者のキープ力が、マンチェスター・シティの遅攻を安定化させた。遅攻の充実度という点で両者には大きな違いがあった。

 得点に直結したのは前半27分。グリーリッシュを経由したボールが逆サイドで構えるベルナルド・シウバにボールが収まる。ポルトガル代表の左利きの技巧派は、後方で構えるジョン・ストーンズとパス交換を交えつつ、中央の様子をうかがいながらさらにボールをキープした。

 そして、バイエルンの右守備的MFレオン・ゴレツカが右寄りにポジションを取る動きを見計らうと、密度が薄くなった中央に横パスを返した。そこに現れたのがアンカーのロドリで、慌ててマークに駆け寄ったジャマル・ムシアラを深々とした切り返しでかわすと、左足のインフロントでバイエルンゴール左上に円やかな弧を描く鮮やかなシュートを蹴り込んだ。

 90分×2本。ホーム&アウェーで行われる準々決勝において、この先制点は通常の試合よりは重みがない。しかもアウェー戦だ。焦らなくてもいいはずだが、ブンデスリーガで10年間、優勝し続けている、苦戦に慣れていないバイエルンは慌てた。

 後半25分、バイエルンの右センターバック(CB)、ダヨ・ウパメカノは、左CBマタイス・デ・リフトからボールを受けると、動きがおぼつかなくなり、グリーリッシュにボールを奪われてしまう。それを受けたアーリング・ハーラントが、逆サイドにマイナスのセンタリングを柔らかく送り込むと、そこにはどフリーでベルナルド・シウバが構えていた。マンチェスター・シティに追加点が生まれた瞬間である。

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