久保建英、日本人最多ゴール記録更新の必然 「スペイン人以上にスペイン人」のメンタリティを発揮 (2ページ目)
【レアル・ソシエダで水を得た魚に】
今シーズンのラ・レアルを象徴するようなゴールだった。
神がかったシルバを中心に、切れ目なく攻めかける。一度の失敗にへこたれない。攻守の応酬のなかで、相手を押しきるのだ。
得点そのものに、久保は関わっていなかった。しかし、得点につながる勢いをつけていた。突破口になって、怒涛を生み出したのだ。
そして後半に入り、60分には久保自身がゴールを決める。
直前に、シルバのスーパープレーがあった。センターサークル付近、トラップコントロールだけで相手と入れ替わる。そして一気に複数の敵をすり抜け、間髪入れずに左足でGKの頭上を狙う。これは相手GKに止められたが、敵に動揺が広がっていた。
ヘタフェが"ふらつきながらパンチが効いてない"とアピールするボクサーのように反撃に出たところ、ラ・レアルはそのボールを奪い返す。すぐさま前にボールをつけ、シルバがうしろから潰される。ファウルにはならなかったが、ボールはそのまま前に運ばれ、ディフェンスが飛び出していたことで守りは手薄だった。左サイドのミケル・メリーノが、中央の久保に完璧なクロスを折り返した。
走り込んだ久保は、それを確実にゴールネットに沈めている。
ラ・レアルには攻守に連続性があって、人が湧きだすようにゴールに迫れるプレー構造がある。ひらめき、連続性、技術が仕込まれていると言うのだろうか。1点目も、2点目も、その結晶だった。
久保は、そのラ・レアルで水を得た魚だ。
記録達成も必然だった。リーガ史上日本人最多のシーズン6点目で、エイバル時代に乾貴士が記録した5点を軽々と越えた。10試合を残した段階での記録突破で、本人の目標設定値はずっと高く、二桁以上だ。
久保はすでに、リーガ史上最も成功した日本人選手である。CL出場権を争うクラブで、レギュラーを奪った選手はひとりもいない。おそらく、他のどの日本人が来ても同じような活躍は望めないだろう。スペインという国は、どこよりもコミュニケーションを求め、その点で高い壁があるのだ。
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