三笘薫と久保建英の今季活躍の理由を福田正博が分析 「環境に慣れて高い技術力を生かせている」 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

【久保建英はチームのスタイルにマッチした】

 この三笘と同じように、世界のサッカーシーンが注目する活躍を久保建英も見せている。3月の日本代表戦は体調面からプレー時間は限られてしまい残念だったが、今季から加入したレアル・ソシエダで攻撃の核として圧倒的な存在感を放っている。

 リーガに移籍してからの過去3シーズンと違い、レアル・ソシエダは試合の主導権を握るチームというのが、今シーズンの久保にとっては大きい。主体的に攻撃を構築するなかで、久保の持つ高い技術力や判断力が生きているし、不慣れだった守備面でも過去3シーズンに在籍したカウンター主体のチームで強く求められたことで、その経験が役立っている。

 昨シーズンまでは左サイドで起用されると本領発揮からは遠いパフォーマンスになる場合もあったが、今季は左サイドでも右サイドでも、そして中央でもプレーできることも証明している。それだけに日本代表で三笘と共存し、どんな攻撃を構築するのかを見たかったが、それは今後の楽しみとして取っておこうと思う。

 三笘も久保も、いろいろな部分で世界トップレベルのサッカーに『慣れた』からこそ、持ち前の高い技術力を生かせているのだろう。

 ただ、こうした『慣れ』の部分を『成長』と表現すると、すべての面で別次元にレベルアップしたように感じてしまいがちだ。しかし、ここは環境に適応できるように『変化』したと捉えるほうがいいだろう。もちろん、三笘にしろ、久保にしろ、これができたのはフィジカルコンタクトがメインではないポジションだからという点も見逃してはいけない。

 そういう観点に立つと、個人的に興味があるのは、今年からカタールリーグのアル・ラーヤンでプレーしている谷口彰悟だ。昨年のカタールW杯では守備の一角で予想を上回るパフォーマンスを見せて日本代表の躍進を支えたが、彼にはW杯時点で海外リーグの所属経験はなかった。

 海外組なら日常から外国選手とのフィジカルパワーの差や足の長さなどの違いに『慣れ』ていけるが、筑波大学を出た2014年からずっと川崎フロンターレでプレーしてきた谷口が、どうやって外国選手に『慣れた』のかは気になるところだ。

 もちろん川崎でJリーグの外国選手と対峙したり、ACLを戦ったりしていた。だが、日本代表経験も少なかったなかで、谷口がなにをどう意識しながらJリーグでプレーするだけでは絶対的に不足する外国選手との対峙に『慣れた』のか。しかも、彼のポジションはフィジカルコンタクトが避けられないセンターバックなだけに、彼が取り組んだ一端には、これからのJリーグや日本サッカーが世界でさらに存在感を高めていくために必要なものがあるのではと感じるのだ。

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