ブラジル人記者が嘆くセレソンの現状 モロッコ戦後の主将カゼミーロのひと言に、国民は世界の終わりを感じた (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【サッカー連盟の見当違い】

 CBFの言い分は、「代表を任せられるようなブラジル人がいないから」だ。確かに最近では国内のビッグクラブでも外国人監督が増えている。この話を掘り下げると長くなってしまうので今は触れないが、とにかくCBFの決意は固い。

 だが、ここでひとつの思い違いが露呈する。ブラジル代表監督は名誉あるポスト。CBFは誰もが喜んで引き受けると思っていたが、それは見当違いもいいところだった。ジョゼ・モウリーニョ、ジネディーヌ・ジダン、ルイス・エンリケ、ジョゼップ・グアルディオラ......有名監督だけに焦点を当てて声をかけたが、受け入れる者はいない。

 現時点で唯一、可能性が残っているのはカルロ・アンチェロッティだが、それも確かなことは何もない。CBFの会長エドナルド・ロドリゲスは、監督探しのためにヨーロッパへ行くことを検討している。まずはアンチェロッティと交渉するつもりだろうが、モロッコ戦はマイナス要素だっただろう。こんなチームをいったい誰が率いたいと思うだろうか。

 どんなスタイルがブラジルには最適なのか。どんな戦術、どんなプレースタイルがいいのか。チームのリーダとなるのは誰か。ヨーロッパのビッグクラブでプレーするスターたちの間に、国内でプレーする選手たちをどのようにミックスしたらいいか。

 今のところこれらの疑問に誰も答えを持ち合わせていない。モロッコ戦の敗退は新しい時代の始まりを、遅らせてしまったかもしれない。

 W杯で予想よりも早く敗退した失望、新監督が決まらない不安、次世代を築く選手が活躍しない不満......しかし、一番問題なのは、こうしたフラストレーションが、人々を「セレソンなんてどうでもいい」という気持ちにさせてしまっていることだ。ブラジル人の心は、これまでにないほどセレソンから離れてしまっている。

 次にセレソンがピッチに立つのは6月。次のW杯までちょうど3年となる。少なくともここからは、新しい時代を始めなくてはいけない。

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