「エムバペ封じ」「メッシ対策」に指を加えたまま完敗。PSG会長は不気味に沈黙、新銀河系軍団が近々解体されるのは必至 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

【メッシとエムバペの連係遮断】

 リーグ・アン第24節のリール戦(2月19日)で負傷したネイマールを欠いたことで、ガルティエ監督は次節のマルセイユとの大一番で初めて3-5-2を採用した。すると、中盤中央にマルコ・ヴェラッティ、その両脇にヴィティーニャとファビアン・ルイスを配置したことにより、それまでのMNMを軸とした3-4-1-2よりも守備は格段に安定した。

 しかし攻撃面では、エムバペとメッシの「2トップ頼み」が色濃くなり、極端に言えば攻撃はふたり任せ。その傾向がはっきりと見て取れるようになっていた。

 そこでバイエルンは、スピード豊かなDFダヨ・ウパメカノとDFヨシプ・スタニシッチの2枚でエムバペの走力を活用するロングカウンターを封じ、残るCBマイタス・デ・リフトとボランチのヨシュア・キミッヒをメッシ対策に当てた。

 それによって、エムバペとメッシのコンビプレーは見事なまでに遮断された。この試合におけるふたりのパス交換は、わずか2本に終わっている。

 新布陣が奏功して3-0で勝利した件のマルセイユ戦では、エムバペが2ゴール1アシスト、メッシが1ゴール2アシストと、お互いが"ケーキを分け合う格好"で勝利を収めた。だが、さすがにその極端な攻撃がバイエルンに通用するはずもない。

 しかも、2試合トータル0-2とされた61分以降も、指揮官はそのまま陣形を維持。ほとんどチャンスを作れないなか、ヴェラッティを2トップ下に配置してエムバペとメッシの中継役にするわけでもなく、そこにカルロス・ソレールを投入することもなく、何が不足しているのかを見ないで選手を代えただけ。

 もともとベンチメンバーが不足していたのだから、それだけで反撃の狼煙を上げるには無理があった。

 そもそも、メンバーを固定することでチーム戦術を安定させることが得意なガルティエ監督は、その手法でリールをリーグ優勝に導き、昨シーズンはニースを躍進させた人物。その反面、試合ごとにメンバーや布陣を変化させ、戦況によって戦い方を変えることは苦手とする監督でもある。

 その人物がCL優勝を目指すチームの指揮を執れば、采配が戦局に大きな影響を与える一発勝負の決勝トーナメントで何が起こるかは、想像に難くなかったはずだ。

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