三笘薫が今季8得点目ゴール後に見せた最高級のプレー その姿に若かりしカズを想起した (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【ウイングの魅力を封印したカズ】

 来る3月24日と28日に、日本代表はウルグアイ、コロンビアと親善マッチを行なうが、森保一監督が三笘をどこでどう使うのか。そのブライトンでのプレーを見ていると、気になって仕方がない。

 このウエストハム戦のゴールは三笘にとって、リーグ戦6点目のゴールになる。FAカップで挙げた2ゴールを含めると、今季8ゴールを挙げたことになる。「大外」を基本ポジションにする、生粋のウインガー、典型的なウインガーであるにもかかわらず、だ。

 想起するのは1990年、ブラジルのサントスから鳴り物入りで読売クラブに移籍してきたカズこと三浦知良だ。

 ところが、全24試合で4得点7アシストという結果でシーズンを終えると、メディアもファンも拍子抜けと言わんばかりに落胆を露わにした。ブラジル時代、全国選手権の左ウイング部門の記者投票で3位となるなど、生粋の左ウイングとして名を売ったカズも、この日本人の反応には落胆しただろう。当時の日本にウイングの文化がなかったことも輪を掛けた。カズは、このまま左ウイングをしていては自分の評価は上がらないと一念発起、トレーニングを一から積み直し、ストライカーへと転身を図った。その結果、初年度のJリーグで通算20ゴールをマーク。1996年には得点王の座まで上り詰めた。

 しかし一方で、ウインガーとしての魅力は失われた。左ウイングとしてプレーするカズの魅力を知るこちらには寂しさが募った。現在UEFAリーグランキングで首位を走るプレミアリーグで、ウインガーとしての魅力を存分に発揮しながらゴールも重ねる三笘をカズはいま、どう見ているのか。

 日本サッカー界にとって三笘が貴重な存在であることは言うまでもない。森保監督が来るウルグアイ戦、パラグアイ戦で、5バックのウイングバックとして彼を再び起用したなら、断固反対するしかない。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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