グアルディオラ監督のマンチェスター・シティはついにCLを制覇するか。図抜けた組織力を壊しても強力な個人ハーランドを入れたチームの行方 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【グアルディオラ監督のチーム作り】

 グアルディオラ監督のチーム作りは、率いた3つのチームに共通している。

 まず、フィールドプレーヤー化できるGKとともに、自陣からの確実なビルドアップを構築する。そのためのギミックを入れる。バイエルン時代はSBフィリップ・ラームのMF起用とサリーダ・ラボルピアーナ(※MFがDFラインに下りて数的優位を作る)に始まり、ダビド・アラバの「偽SB」。さらに両SBの偽化。シティではジョアン・カンセロのアラバ的な偽SB。バルセロナではそれらすべてが断片的に行なわれていた。

 確実にボールを敵陣に運んでから、後方からのプラスアルファによる数的優位の創出は共通。カンセロが去ったあとのシティでは、右SBリコ・ルイスがMFとして振る舞い、中盤の厚みとカウンターアタックへの予防役を務める。バルサとシティでは「偽9番」を多用。これも数的優位を作るもの。バイエルンでやらなかったのはロベルト・レバンドフスキという本物の9番がいたからだ。

 そして、アタッキング・サードに関しては、ゴールゲッターの特徴次第という点が共通している。メッシ、レバンドフスキ、セルヒオ・アグエロではそれぞれ特徴が異なるため、フィニッシュへのアプローチは違っているが、得点源の特徴に合わせるという手法自体は一緒である。ペップは天才との化学反応で黄金を作る錬金術師のようだった。

 昨季のシティは軸になるゴールゲッターがいなかった。そのため、常にボックス内に4人以上を送り込む一種の人海戦術を採っていた。ポケットをとって低いクロス、そこへ4人が飛び込む。誰かの能力に依存するのではなく、誰でもいいから当たれば入りそうな状況へ持っていった。

 特定の得点源に依存しないので、よりトータルフットボール的な印象の強い仕上がりになったが、今季はアーリング・ハーランドを獲得している。ごりごりの9番だ。

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