JベストGK高丘陽平、横浜F・マリノスからMLS挑戦の決断を語る。「迷いもありましたが...、今回の挑戦にかけるべきじゃないかって」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO SPORT

【自信になった2022シーズン】

 しかし、そんな自分を受け入れ、弱さとも対峙することで、地道に力をつけてきた。

「毎日の練習で、できていないこと、できなかったことを消していく作業は好きだと思います」

 高丘は生き生きとした声で、GKとしての生き方を語る。

「試合に勝ってうれしいというのはもちろんありますが、GKとして(うまくなるために)向き合う作業そのものが楽しいというのはありますね。試合で出たウィークポイントを練習で改善し、日々、最善にアジャストさせるというか......。自分に圧倒的な実力がないから失点するわけですが、なんでそうなるのか、理由、要因を確かめながら、弱点をひとつずつ潰していくんです」

 そのひたむきさが、彼を総合的にハイレベルなGKにした。

 2022年シーズンは、単純に間合いを詰めるスピードが上がった。シュートストップの技術も上がり、弾く場所やその後の反応は秀逸。頭上の強く速いシュートに対し、速さも強さも増した。ガンバ大阪戦で、クロスからパトリックのシュートをはじき出した場面は一例だろう。自らの間合いに入れる感覚も上達し、川崎フロンターレ戦で家長昭博のシュートを防いだシーンはハイライトのひとつだ。

 試合を重ねるたび、神がかったセービングが増えた。

「ACL(アジアチャンピオンズリーグ)はベトナムで集中開催だったんですが、高温多湿での6連戦を戦ったにもかかわらず、それなりのパフォーマンスを維持できました。それがひとつの自信になったかもしれません。タイトな日程でも、ベストに持っていけたので、これができたんだから、と。ハードなトレーニングのなかで、ケガもせず、最大の出力でプレーする感覚が宿ってきたというか......」

 そして、ビッグセーブが試合の潮目を作るようになった。

 リーグ終盤の9月のアビスパ福岡戦では、ファンマ・デルガドとの1対1で相手を誘い込んで止め、1-0の辛勝に貢献している。同じ9月の北海道コンサドーレ札幌戦では、エリア内での決定的ヘディングを見事に外へはじき出し、結果は0-0となりチームを敗北から救った。この2試合だけで勝ち点4の計算で、「優勝に結びついた」とも言える。

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