エムバペの負傷で途端に弱ったパリ・サンジェルマン。メッシ、ネイマールを生かし、CLバイエルン戦に勝つ方法は何か (3ページ目)

  • 西部謙司●文 Nishibe Kenji

【何が何でもボールを持たないといけない】

 エムバペを欠いたメッシとネイマールの2人だけでも、守備の脆弱性は明確にある。つまり、パリSGは攻め込まれて強いチームではないので、自分たちがボールを保持して優勢にゲームを進めることが大前提になっているわけだ。

 実際、リーグアンのほとんど試合で、パリSGは圧倒的にボールを保持して攻撃している。攻撃しているかぎり、パリSGは欧州最強クラスのチームだ。たまに攻め込まれても、エムバペがいれば驚異的なカウンターアタックを発動させることもできる。

 敗れたマルセイユ戦では、その点でエムバペの不在は響いていた。メッシ、ネイマールはほとんど足元でボールを受ける。裏の恐さがあまりないので、2人の背中にDFを貼りつかせてファウルも辞さない激しさで守れば、パリSGのカウンターは封じることができた。

 そしてパリSGにとって致命的だったのが、ボールを奪ったマルセイユがCBを前線近くへ送り込んできたことだった。ただでさえ人数が足りていない守備ブロックに、ノーマークのCBが入ってくる。スーパースター2人を擁することが弱点になってしまう、想定外の事態である。

 バイエルンにマルセイユと同じことをやられる危険は十分にある。マルセイユのパリSG対策は、実は古典的と言っていい手法だからだ。

 1974年西ドイツW杯決勝、西ドイツ対オランダ。オランダのエースであるヨハン・クライフに対して、西ドイツはエースキラーのベルティ・フォクツが徹底的にマンマークした。

 オランダは開始1分にクライフのドリブル突破から得たPKを決めて先制するのだが、その後に西ドイツが2ゴールをゲットして逆転勝ちする。クライフがフォクツに完封されたのが痛手だったのだが、それ以上に、西ドイツの攻撃時に常にフォクツが攻撃に出てくるのが、オランダにとって難題になっていた。

 スーパースターはマークしないわけにはいかない。ただし、それだけだと一瞬の隙を突かれてやられてしまう。それよりもスーパースターに守備をさせること。それこそが最大の対策になるわけだ。

 つまり、メッシとネイマールを守勢に回せばバイエルンの思うつぼ。2人がいつもどおり攻め残りすれば、それはそれでバイエルンには悪くない。

 パリSGとすれば、何が何でもボールを握って主導権を握りたい。それができればメッシとネイマールの威力がモノを言う。スーパーな2人が絶対的な優位性になるか、弱点になってしまうのかは、メッシとネイマールよりもその他の選手たちにかかっている。

【筆者プロフィール】
西部謙司(にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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