伊東純也のドリブルはPSGの名SBでも止められない。リーグ・アン特有の激しい「デュエルの餌食」にならない理由 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

【レキップ紙も高評価を連発】

 伊東がこれほど指揮官から信頼される最大の理由は、好不調の波がなく、毎試合安定したパフォーマンスを見せているからだ。数字だけ見れば、たしかにゴールは第12節のオセール戦から遠ざかり、アシストも1のみ(第9節@トロワ戦)。しかし、W杯後の試合でも変わらずチャンスに関わり、ハイパフォーマンスをキープしている。

 それを証明するのが、フランス最大のスポーツ紙『レキップ』の採点だろう。PSG戦で合格点の6点と評価された伊東は、毎試合の採点の平均値で5.59をマークしている。

 スタッド・ランスのレギュラー陣でこの数字を上回るのは、目下リーグ得点ランキングの首位につけるエースのバログン(5.88)と、リーグ屈指のセーブ率を誇る守護神イェファン・ディウフ(5.64)のふたりのみ。伊東が低調とされる4点と評価されたのは、第14節のナント戦しかない。

 伊東にとって幸運だったのは、ウィル・スティルが監督に就任したことにより、今ではリーグ・アンの「台風の目」と化している上昇機運のチームに身を置けていることだろう。それによって、伊東も目覚ましい成長を遂げる若いチームメイトを生かし、逆に自らが生かされる環境のなかでプレーできている。それが、伊東の追い風にもなっている。

 そんなチームに変えたのが、30歳の若手監督ウィル・スティルだ。

 英国人の両親を持つベルギー人のウィル・スティルは、少年期に選手の道をあきらめ、監督になるために17歳でイングランドのプレストン(マイヤーズコー大学)に渡って2年間学んだ変わり種。その後、ベルギーに戻ってからアナリストとしてプロクラブに売り込みをかけ、ようやく無給のインターシップとしてテスト採用してくれたのが、シント・トロイデンだったという。

 そこからベルギー国内のクラブで分析官、またはアシスタントコーチとして修業を積み、2021年にスタッド・ランスのアシスタントコーチに就任。ただし、現在はまだUEFAのBライセンスしか取得しておらず、リーグ・アンで監督を務めるために必要なプロライセンスを取得する予定の今夏までは、クラブが罰金を支払いながら指揮を執っている。

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