ブラジル人記者の嘆き。王様ペレの葬儀にセレソンの新旧スター選手たちが背を向けたのはなぜか (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【ペレをよく思っていなかった選手たち】

 ロナウド、カフー、ロナウジーニョ、ロベルト・カルロス、ベベトらの姿も一切なかった。皆、来なかった理由について「国外にいたから」「病院に行かなくてはならなかったから」「ショックでメンタル的にやられていたから」など、なにかにつけて言い訳をしている。

「飛行機をうまく乗り継ぐことができなかった。でもだからといって、ペレへの思い、ペレがサッカー界を代表する存在であることに変わりはないだろう?」

 カフーはそうコメントしたが、こうした言い訳を人々は信じない。デビッド・ベッカムは女王に最後の挨拶をするために何時間も並んだのに、ブラジルの選手たちは王と呼ばれた人物に最後の別れを告げるのも億劫がったのだ。

 カカはこの12月に「ブラジル人は他の国に比べてレジェンド選手を大事にしない」と不平を漏らしていたが、自身の行動でそれを証明してしまった(のちにカカは自身のインスタで、その発言と、葬儀に参列しなかったことを謝罪した)。

 グローボTVで解説を務める元ブラジル代表のワルテル・カサグランデは、「金持ちの選手たちは、金をもらわなければ何もしない」と揶揄した(ちなみに彼自身も、『ショックだから』と参列しなかったのだが)。

 胸に5つの星をつけ、サッカー大国の選手として大きな顔をしている選手たち。彼らはペレから受けたその恩を忘れている。胸に着ける星のアイデアはそもそもペレが提案して実現したものだし、そのうちの3個はペレがもたらしたものだ。彼らは結局のところ、金儲けとタトゥーとヘアスタイルにしか興味を持たないのだ。

 それにしても、これだけ選手が葬儀に来ないことには、何かわけがあるのかと勘繰ってしまう。先のカザグランデは、かつてペレがテレビ解説者を務めていた時、ブラジル代表のパフォーマンスを批判していたからではないかと言っている。

 確かにある年代の代表選手たちは、ペレにいい印象を持ってはいない。その筆頭が94年アメリカW杯の優勝チームだ。

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