カタールW杯総括。名波浩が選んだ「ポジション別ベストプレーヤー」 (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・構成 text by Shino Yukihiko
  • photo by JMPA

 アルゼンチンは3バックと4バックを使い分けたり、ダブルボランチから1アンカーに変えたり、いろんなことをやりながら勝ち上がってきて、一方のフランスはレギュラーをほぼ固定せざるを得ない状況だった。

 しかしながら、フランスは前半終了間際に2人の選手を代えた。あの決断はすごかった。ディディエ・デシャン以外にできる監督がいるのかなと思う。自分には、それまでに4点とっているストライカー(オリビエ・ジルー)をあのタイミングで代える勇気はない。

 その交代でフランスはエムバペをトップに置いて、両サイドに走力と突破力のあるマルクス・テュラムとランダル・コロ・ムアニを投入し、カウンターにシフトしてきた。試合の展開やアルゼンチンとのかみ合わせを考えれば、個人的にも、時間をかけずに攻撃を完結させる、あの形のほうがいいと思った。

 今大会は守備時に5バックに可変して、相手にスペースを与えない形をとるチームが多かった。それは2002年以降のデータで、今大会のシュート数が過去最少(1458本)という数字にも表れていて、シュートのエリアに入ることがどんどん難しくなってきている。

 その一方で、ゴール数は過去最多(172点)だったというのは、それだけ少ないチャンスをモノにできる決定力の高いストライカーが多かったのだろう。あるいは、決定的なチャンスを作る精度が上がっている、ということかもしれない。

 そんな今大会の特徴を言えば、ひとつのことをやりきるような国が減って、クラブレベルでやっている試合のなかでのシステムの可変を、代表でもやる時代になってきたことが見てとれた大会だったと思う。

 大会MVPがメッシというのは当然だろう。以前、ジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)がメッシのよさをこう表現していた。「結局、キーとなるパスが多いのがメッシなんだ」と。

「ドリブルで何人も抜いて、シュートもバンバン決める。それも、メッシが持つ世界トップの能力だと思う。ただ、それ以上にアタッキングサードに入ってからの決定的なパスの精度、数が何よりすごいんだ」と。

 自分も、ペップと同じ考えで、今大会のメッシもまさに"キーパス"によって決定的なシーンを幾度も演出していた。

 それに対して、(今大会で出番が少なかった)ラウタロ・マルティネスやパウロ・ディバラは(メッシの)近くに寄ってしまうから合わないけど、フリアン・アルバレスは一気に抜け出すように走るからメッシと合ったのだと思う。

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