心を開いたメッシと真剣に成功したい若い世代の結束。アルゼンチン人記者が明かすW杯優勝秘話 (3ページ目)

  • セルヒオ・レビンスキー●文 text by Sergio Levinsky
  • 井川洋一●翻訳 translation by Igawa Yoichi

【メッシの周りにとびきりのタレントが揃った】

 きっとメッシはその時、アルゼンチン代表の大きなポテンシャルを感じ、心からそう監督に伝えたのだろう。アキレス腱とも言われていたGKにエミリアーノ・マルティネスというプレミアリーグで成長した守護神が台頭し、最終ラインは重鎮ニコラス・オタメンディを中心に駆け引きに長けた守備者が揃う。

 中盤より前には、メッシに攻撃時に力を発揮してもらうべく、彼のぶんまで汗をかき、そのうえ技術にも優れる好タレントで構成された。

 さらに今大会では、そこに新世代のストライカー、フリアン・アルバレスと、攻守に燦然と輝くエンソ・フェルナンデス──カタール大会の最優秀若手選手だ──という、ともにリーベル・プレート出身の若手が加わり、世界の頂点を極めた。

 一見、メッシ以外は地味な選手の集まりにも見えたかもしれないが、それぞれをつぶさに凝視すると、とびきりのタレントが何人もいるのだ。そして全員、アルゼンチン人らしい気概を持っている。

「PK戦になると、即座に立候補する選手が、少なくとも7、8人はいるんだ。本当に心強い選手たちだよ」と明かしたスカローニ監督は、メッシの未来について、こう話した。

「彼の今後について決めるのは、もちろんメッシ本人だ。でもね、私は彼が次のW杯でもプレーするという幻想を抱き続けているよ」

 それはメッシについていったチームメイトも同じ気持ちだ。悲願の世界一を遂げただけでも幸せなのに、そんな夢を持ち続けられる私たちアルゼンチン人は今、幸福の極みにある。

後編「メッシはマラドーナを超えたのか」>>

【筆者プロフィール】
セルヒオ・レビンスキー
Sergio Levinsky/アルゼンチン出身。ブエノスアイレス大学社会科学学部を卒業。バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号も取得。1982年より記者として活動を始め、ワールドカップは1986年メキシコW杯よりすべての大会を取材。アルゼンチン国内の各種メディアで活動するほか、ヨーロッパのスポーツメディアや日本のメディアにも記事を寄稿している。

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