「ここまでのベストゲーム」だったが、結果は妥当。フランスとイングランドの間にあった大きな差 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 だが、対するイングランドも今大会屈指の"いいサッカー"をする"いいチーム"である。

 この日の先発メンバーには2000年代生まれの選手が3人も名を連ねたが、それでも組織的な規律を備えたうえで、豊富で多彩なアタッカーを生かすサッカーを確立していた。

 実際、この試合でもDFラインから攻撃を組み立て、最後は右サイドのニアゾーンをうまく使った連係からPKを得て、一度は同点に追いついている。

 だが、裏を返せば、いいチーム止まり。勤勉でよく走り、規律を守るチームは、決め手に欠けた。

 後半、FWハリー・ケインのPKで同点に追いつき、さらに攻勢を強めてはいても、チャンスを生かしきれない攻撃にはどこか危うさが漂い始めていた。

 こうした展開では、得てして押されている側にビッグチャンスが転がり込むのがサッカーの常。一見イングランドが押してはいるが、どこかでフランスが点をとってしまいそう。そんなふうに見えたのは、ただの結果論ではないはずだ。

 イングランドとは対照的に、フランスの試合運びは、いかにも老獪にして巧みだった。

 フランスにしても、2000年生まれのチュアメニなど、若い選手がいないわけではないが、プレーにメリハリをつけ、勝負どころを見逃さない試合運びは、イングランドにはないものだった。

「イングランドも強いが、若い選手が多い。(それに対して)我々は多くの選手がヨーロッパのビッグクラブでプレーしていて、経験がある」

 フランスのディディエ・デシャン監督はそう話していたが、なるほど22歳のチュアメニにしても、レアル・マドリード所属。十分に場数は踏んでいる。

 無駄な失点さえしなければ、エムバペ、デンベレという強力ウイングに加え、今大会好調のストライカー、FWオリビエ・ジルーという豪華3トップが前線に控えているのだから、ワンチャンスで試合を決めることができる。そんな自信が、試合運びに余裕を与えるのだろう。

 結局、この試合でも、最後はグリーズマンのクロスをジルーが頭で決めて、勝ち越した。

 必ずしもチーム全体でポゼッションを高め、敵陣に押し込む時間を長くするわけではないが、"ここ"という時はしっかりと人数をかけ、厚みのある攻撃を実現するあたりはさすがのひと言だ。

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