優勝候補筆頭に躍り出たアルゼンチン。メッシは健在ぶりアピールも活躍頻度は減っている (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

【布陣変更で勢いに乗ったオランダ】

 試合は前半35分、アルゼンチンの先制弾で動いた。立役者はリオネル・メッシ。右斜め前方を走るナウエル・モリーナにその左足パスが通ると、固さに定評のあるオランダの守備陣はあっさりと崩れた。

 その少し前(前半23分)、フリーで打ったシュートを吹かすメッシを見ていると、往年の力はもはやないかに見えた。少なくとも筆者はその時、メッシを少しばかり見くびっていた。オランダもメッシへのプレッシャーが弱かったので、油断があったのかもしれない。モリーナの先制弾はメッシの健在ぶりをアピールする一撃でもあった。
 
PK戦の末にオランダを破り、歓喜するリオネル・メッシらアルゼンチンの選手たちPK戦の末にオランダを破り、歓喜するリオネル・メッシらアルゼンチンの選手たちこの記事に関連する写真を見る とはいえ、メッシが圧倒的な存在感を発揮した回数はけっして多くなかった。後半19分、バーの上をわずかに越えたFK弾と、後半28分、追加点となるPKぐらいに限られた。メッシに決められたこのPKは、オランダにとって痛かった。右のウイングバックからサイドバックにポジションを変えていたデンゼル・ダンフリースが、マルコス・アクーニャを倒したプレーだが、オランダはヒタヒタと追い上げていて、同点は実現可能なものに見えていたからだ。

 アルゼンチンに0-2とされ、残り17分+アディショナルタイム。勝負は決したかに見えたが、オランダの追い上げムードは勢いを増した。守備的な3-4-1-2から、攻撃的な4-2-3-1への布陣の変更も追い上げムードを促す結果となった。

 83分には左利きのステフェン・ベルハイスが上げたクロスを、交代で入った197センチの長身FW、ボウト・ベグホルストが頭で合わせ1点差とする。そしてこの試合最大の見せ場が訪れたのが10分にも及んだ後半の追加タイムの、さらにその追加タイムに当たる11分目だった。

 FKのチャンスに、キッカーのトゥーン・コープマイネルスが蹴ったキックは、壁のなかに差し込むように送り出した、まさに針穴を通すようなショートパス。それを受けたベグホルストが左足でこれを決めきったのだ。

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