37歳の大ベテラン・モドリッチを中心にカタールW杯に臨むクロアチア。選手寿命が延びた時代に起きた先駆的ケース (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

大ベテランがエースというレアなケース

 カタールW杯に臨むクロアチアのエンジンルームは、前回同様にMFだ。モドリッチ、コバチッチ、マルセロ・ブロゾビッチのトリオは世界でも屈指である。

 FWでは左利きの右サイド、ロブロ・マイェルが注目される。まだ経験は浅いがフランスのレンヌで活躍し、エレガントで頭脳的なプレーぶりはクロアチアの選手らしい。

 ただ、クロアチアにはいろいろなタイプの選手がいて、人種的な多様性はないのに選手には多様性がある。巧い、高い、強い、速い、ひととおり揃っている感じだ。ユーゴスラビア時代からフットボール・ネイションだった伝統の厚みだろう。

クロアチア代表の主要メンバークロアチア代表の主要メンバーこの記事に関連する写真を見る ズラトコ・ダリッチ監督は戦術家というタイプではないようで、激しやすい性格もあってメディアとの関係も必ずしもうまくいっていない。実質的な監督は、おそらくモドリッチなのだろう。37歳のモドリッチは例外的な存在になっている。

 この年齢で衰えを知らないプレーぶりなのも驚異的だが、37歳の選手が代表チームの中心にいることも過去にはなかった。カメルーンのロジェ・ミラが42歳でアメリカW杯に出場した例はあるが、この時はすでに第一線からは4年前に退いていて、実質的には引退していた選手を大統領の要請で呼び戻したにすぎない。

 まだ現役バリバリの40歳近い大ベテランが代表チームの中心というモドリッチのケースは珍しい。これだけ長期間活躍した選手になると、フィールド内だけでなくフィールドの外においても影響力は絶大になる。ある意味、監督よりも偉い存在であっても不思議ではない。アルゼンチンのメッシ、ポルトガルのロナウドも似た立場だろう。

 1人の選手ではあるけれども、エースとかキャプテンという領域を超えた存在にならざるをえない。選手寿命が延びたことで起こった今までにない現象であり、おそらく今後もこうした例は増えていくのだろう。

 ペレやディエゴ・マラドーナも別格ではあったが、ワールドカップで活躍した時、年齢的には30歳前後にすぎなかった。それより10年近い経験値を持つベテランが中心にいるチームがどう機能するかは、カタール大会の見どころのひとつだと思う。

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