スペイン代表、黄金期から凋落へ。日本がつけ込むべきポイントは見えている (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

「中盤サッカー」の終焉

 デル・ボスケは後半15分、ヘスス・ナバスを投入する。ペドロと2人で両ウイングを形成させるのかと思いきや、交代した相手はペドロで、その後も3トップの左右のバランスは崩れたままだった。右ウイングのヘスス・ナバスが、独得のパスサッカーに有機的に絡むことができたのは延長戦に入ってからだった。PK戦突入かと思われた延長後半11分。右サイドを30メートル、ドリブルで駆け上がったプレーが、イニエスタの決勝ゴールにつながった。

 2年後、ウクライナとポーランドで共催されたユーロ2012も、スペインは中盤サッカーで勝ち上がる。ペドロ、ヘスス・ナバスというサイドアタッカーより、シャビ・アロンソ、セルヒオ・ブスケツ、シャビ、セスク、イニエスタ、ダビド・シルバ、フアン・マタといったMF系の選手の出番のほうがはるかに多かった。ともすると強引な印象を受けた。

 キーウのオリンピスキで行なわれたユーロ2012の決勝は、スペインが中3日なのに対し、相手のイタリアは2日という日程の差が、4-0という一方的なスコアに反映したと見る。

 ユーロ2008、2010年南アフリカW杯、ユーロ2012と、主要大会で3連覇を飾ったスペインだが、何を隠そう、筆者には4連覇がなさそうなことは、ユーロ2012決勝の段階で何となくイメージできていた。今後の可能性という点では、準決勝でイタリアに敗れ、ベスト4に終わったドイツのほうに魅力を抱かされた。

 2014年ブラジルW杯。サルバドールのフォンチ・ノヴァで戦った初戦の相手は、前回、南アフリカ大会で決勝戦を争ったオランダで、スコアは1-5の大敗だった。第2戦もチリに0-2で完敗。サイドを使わないスペインの中盤サッカーは、ブラジルの地で無残にも終焉を迎えることになった。

 ユーロ2016のスペインは、グループリーグでクロアチアに1-2、決勝トーナメント1回戦でイタリアに0-2で敗れている。2018年ロシアW杯は開催国のロシアに決勝トーナメント1回戦でPK負け。ユーロ2020は準決勝でイタリアにPK負けしている。
 
 2014年当時より、上昇傾向は見られる。サイドをカバーしない中盤サッカーから脱出することはできているが、中盤選手に比べ、ウイング的なサイドアタッカーの質は高くなく、「攻撃に必要な3つのルート」が整備されたとは言い難い。ドリブラー不在。スペインサッカーに、フィーゴやロッベンが生まれてくる気配はない。カタールW杯。日本がつけ込むべきポイントはハッキリと見えているのである。
(つづく)

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