スペイン代表、黄金期から凋落へ。日本がつけ込むべきポイントは見えている (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

南アフリカW杯の勝因

 スペイン代表監督には、アラゴネスの後任として、ビセンテ・デル・ボスケが就任した。レアル・マドリードを欧州一に2度導いたベテラン監督である。しかし以降も、シャビを中心とするバルサ寄りのサッカーに特段、大きな変化は起きなかった。2000-01シーズン初頭、デル・ボスケはルイス・フィーゴをバルサから強引な手法で獲得した際、筆者にこう述べている。

「真ん中、左、右と攻撃には3つのルートが必要だ。我々のチームにはこれまで、それが満足に整っていなかった。フィーゴを右ウイングに据えることができれば、3つのルートを鮮明に描くことができるのだ」

 両サイドにウイングプレーヤーを配置するサッカーは一時期、廃れていた。1990年代は、大袈裟に言えば、オランダ代表かクライフ監督が率いるバルサぐらいに限られていた。2トップより3トップのほうが比率的に多そうな現在とは、一線を画していた。デル・ボスケ監督はライバルチームであるバルサから、フィーゴのみならずそのコンセプトまで頂戴した格好だった。

 だが、スペイン代表にフィーゴはいない。2010年南アフリカW杯のメンバーに、SB以外のサイドアタッカーはペドロ・ロドリゲスとヘスス・ナバスの2人のみだった。

南アフリカW杯で世界の頂点に立ったスペイン代表南アフリカW杯で世界の頂点に立ったスペイン代表この記事に関連する写真を見る 苦戦はそこに起因していた。グループリーグ初戦でスイスに敗れ、2戦目のホンジュラスには2-0で勝利したが、3試合目のマルセロ・ビエルサ監督率いるチリにはまたもや大苦戦する。

 しかし、その後はポルトガル、パラグアイ、ドイツをそれぞれ1-0で破り、決勝に進出を果たす。相手のオランダは、サッカーのルーツ的に言えば、バルサとは親戚関係にある国だ。3FWの国である。この試合でも、両ウイングにはアリエン・ロッベンとディルク・カイトが構えていた。

 対するスペインは、4-3-3の右ウイングにはペドロを置いたが、左はイニエスタだった。例によって、長い時間、真ん中に入り込むことになった。ある時間まで、どちらかと言えばオランダペースで進んだ原因である。

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