ロナウド移籍騒動はマンU残留で幕。ビッグクラブが獲得をためらったそれぞれの理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

ロナウド中心の戦いにならざるを得ない

 クラブと監督、どちらもが合意し、獲得に積極的になるところが現れなかった。アトレティコは、ディエゴ・シメオネ監督は前向きだったが、クラブは後ろ向き。チェルシーはクラブが興味を示したが、トーマス・トゥヘル監督が反対した。プロの第一歩を踏み出した古巣スポルティング・リスボンへの復帰は美談に思えたが、高額のサラリー以上にルベン・アモリム監督が「ロナウド獲得なら辞職する」とまで反対し、暗礁に乗り上げることになった。

 ロナウドとメンデス代理人が最後まで望みを託したのが、セリエAのナポリだった。クラブの会長が強い関心を示しただけでなく、ルチアーノ・スパレッティ監督も「ロナウドを指導することは、監督人生の逸話になる」と語り、相思相愛の関係に見えた。かつてディエゴ・マラドーナが熱狂を巻き起こしたクラブは、2018年にもロナウドにオファーを送っていたが、当時はCL出場権がなかった。

「ヴィクター・オシムヘンを1億ユーロ(約140億円)で売却、代わりにロナウドを獲得し、年俸は1700万ユーロ(約24億円)」

 具体的な条件内容の報道もあったが、8月31日にはすでにその線は消えていた。

 誤解を恐れずに言えば、どのクラブもロナウド獲得に逡巡した。望みどおりの金額のオファーを用意したのはサウジアラビアの金満クラブだけだった。

 時代の変化を感じさせる。かつてロナウドはリオネル・メッシと双璧をなし、シーズン50得点も見込める世紀のヒーローだった。今も、そこまで衰えていない。ユベントスでも一昨シーズンにセリエA得点王になっているし、昨シーズンはユナイテッドでカップ戦を含めると24得点を叩き出している。しかし高額な年俸もそうだが、彼中心の戦いにならざるを得ない戦術的犠牲が見合わなくなってしまった。

「もうイタリアでは見たくない。彼がやってきて、クラブ内でさまざまな問題を引き起こした。その結果から、クラブはまだ立ち直りきれていない。ひとりだけ年俸3400万ユーロ(48億円)で、他がせいぜい600万ユーロ、700万ユーロだったら、摩擦が起きるのは当然だ」

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