柴崎岳、指揮官の信頼に応えられず。名門デポルはなぜ転落したのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakasjima Daisuke

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 しかし、その後は坂道を転げ落ちるようだった。2011年に2部降格が決まった時は、200億円以上の負債が発覚。その後は1部と2部を行き来するようになったが、昨シーズンも1部昇格プレーオフを戦うなど、2部の中では依然として有力クラブだった。

 今シーズンも、予算的には2部で5番目に多いチームだった。目標は1部復帰。資金をかけて有力選手を獲得し、そのひとりが柴崎岳だったと言える。

 だが、クラブ内部は混乱していた。シーズン中に会長が交代。監督も、現在のフェルナンド・バスケスで3人目である。17試合連続勝ち星なしの後、6連勝で歓喜に湧くも、コロナ禍による中断前後は再び7試合連続勝ち星なしに。終盤戦は暗黒の3連敗だった。

「せっかく残留圏から抜け出せるはずだったのに、その機会を逃した。泣きたい気分だよ。説明がつかない。恥ずべき結果だ」

 第40節、降格が決まっていたエストレマドゥーラに対し、先制しながら逆転され、追いついたものの、終了間際の失点で逆転負け(結果は2-3)した後、バスケス監督は動揺を隠せなかった。指揮官が我を失うことは、最悪の予兆である。

「監督はうつ状態ではないか。降格のストレスで人が変わってしまった。今や特定の選手を信用するだけで人を近づけず、視野が狭くなっている」

 地元の記者は懸念の声を上げていた。そのバスケスが最も信頼したひとりが柴崎だった。

 今シーズン前半、柴崎は周囲の期待を裏切っていた。リーダーのひとりとして迎えられたにもかかわらず、不調のチームに埋没。不振の戦犯のひとりとされた。

 ところが、バスケス監督が昨年12月末に就任すると、戦術軸に復活。3-4-2-1のボランチの一角で、ゲームをコトンロールした。コントロール、キック、ビジョンは2部では群を抜き、エレガントさを見せている。

 ただ、シーズンを通して見た柴崎のプレーは、チーム同様に安定していなかった。

 前を向いてボールを持てたら、どのゾーンでも無双状態に近くなるだけに、使い方次第の選手と言える。その点、ヘタフェ時代のホセ・ボルダラス監督は柴崎を要所で投入し、結果を引き出していた。

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