ユーロ1年延期即決の裏事情。UEFAが迅速に動いた背景を読み解く (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 今回の会議に参加したUEFA実行委員会をはじめ、55の各協会代表者、ECA(ヨーロッパクラブ協会)代表者、FIFPro(国際プロサッカー選手会)代表者らが、満場一致で採決に至ったのもうなずける。

 しかし同時に、今回の決定プロセスを見てみると、いかに現在のサッカー界が複雑に入り組んだカレンダーのなかで、実は息をつく暇もないほどギリギリの状態で成り立っているかが、白日の下にさらされたとも言える。

 そもそも、UEFAが今大会(ユーロ2020)の延期を決めた背景には、自ら被る莫大な損失を最小限に抑えなければならない事情がある。

 前回大会から参加国を16から24に拡大させたことで、試合数はさらに増加。そのうえ、今大会は60周年記念大会と位置づけて12カ国での分散開催としたことにより、得られる収入はこれまでの比ではない。仮に大会が中止となった場合、当然ながらその"巨大な富"を失うばかりか、多額の賠償請求の問題も浮上する。

 逆に、その損失を防ぐべく「ユーロ2020」を強行開催した場合、まだ再開の見通しがついていないヨーロッパカップを日程的に決勝戦まで消化することはできない。「UEFAの大動脈」とも言えるヨーロッパカップを中断したままフェードアウトさせてしまえば、来シーズン以降の財源に大きな穴が空いてしまうことになる。

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