三浦泰年がブラジルでサプライズ。田舎チームが奮戦、選手に伝えたこと (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 ふたつ目はブラジルメディアに対し、自らを印象付けるのに成功したことだ。それもかなりポジティブな印象だ。彼が練習を指導する様子は、SporTVでも取り上げられていた。エモーションやモチベーションという、言葉ではなかなか説明できないものを、彼は選手たちに理解させた。

 テレビのコメンテーターは、ソコーロの試合を見て「この日本人はどうしたらそれを成しえたのか」「彼こそが本当の監督だ」と言っていた。「もしすべての監督が彼と同じエネルギーとモチベーションを持っていたら、ブラジルのサッカーはもっと底力を持つことができるだろう」とも。

 テレビはまた、ソコーロの敗退が決まったイトゥアーノ戦の試合前後の監督と選手たちの様子をクローズアップしていた。試合前、ヤスはプレーの最終確認と相手チームの戦略について説明すると同時に、選手たちにこんな言葉をかけた。

「君たち全員に『自分がチームを引っ張るキャプテンだ』と思ってほしい。緊張はせず落ち着いて、しかし心は熱く持っていてほしい」

 試合後、敗退の決まったロッカールームでの言葉は、より選手の心に響くものだった。

「今日の君たちのプレーは本当によかった。私は満足している。君たちを応援に来てくれた人たちも、故郷でテレビを見ていた人たちも、私と同じように君たちを誇りに感じたと思う。私は自分の選手としての、そして監督としての経験を、この短い間にできるだけ君たちに伝えたかった。君たちそれぞれが、何らかのものを私から学んでくれたら嬉しい。君たちの監督だったことを私は誇りに感じる。君たちを率いるのはたった2カ月だったし、対戦するのは強いチームばかりだった。しかし、私は最初からこのチームの強さを信じていた。ブラジルと日本のサッカーのそれぞれのいいところを融和させれば、きっといいチームができると思っていた」

 これこそがまさに、ヤスが伝えたかったことだったに違いない。



4 / 4

関連記事

このページのトップに戻る