どん底からV字回復。オランダを蘇らせた「クーマンの秘蔵っ子たち」 (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 ここ最近のオランダ代表の体(てい)たらくに、オランダ人も忸怩(じくじ)たる思いがあっただろう。

 秋深い10月、オランダがドイツを3-0で下した翌朝、全国紙の『アルヘメーン・ダッハブラット』は見出しに「春(Lente)」とだけ書き、オランダ人の心情を表現した。紅葉すら春の日差しに見えてしまう、待ちに待ったオランダ代表の雪解けの季節が訪れたのだ。

 隣国ベルギーでは、地元新聞が「クーマン・ベイブス」という言葉を作った。「クーマンの秘蔵っ子たち」とでも訳せばいいだろうか。

「アリエン・ロッベン、ウェスレイ・スナイデル、ロビン・ファン・ペルシー、ラファエル・ファン・デル・ファールト、ディルク・カイト......彼らがいたころと比べると、今のオランダはビッグネームがいなくて寂しい」と思う人がいたら、フランスを2-0で破った映像を探してチェックしてほしい。

「今のオランダには、ファン・ダイク、デ・リフト、フレンキー・デ・ヨング(アヤックス)、ジョルジニオ・ワイナルドゥム(リバプール)、ステーフェン・ベルフワイン(PSV)、メンフィス・デパイ(リヨン)......と、なかなかの個性派揃いだぞ」と言いたくなる。マルテン・デ・ローン(アタランタ)の地味さ加減すら、かえって強烈な個性に感じるほどだ。

 なかでも、デ・リフトとデ・ヨングは、スペイン国内で知らない人がいないほどの選手だ。なぜならば、バルセロナ系のスポーツ紙はネタに困ると、アヤックスに所属するこのふたりを一面トップに持ってきて、「バルサ、デ・ヨングを獲得へ!」「デ・リフト、実力間違いなし」とあおっているからだ。デ・リフトとデ・ヨングがスペイン紙の一面トップを飾ったのは、なんと過去に30回ほどある(以前、オランダ紙が数えていたが、その後さらに回数が増えてしまったので、私には正確な数字がわからない)。

 チャンピオンズリーグでは現在、アヤックスがグループEで2位につけ、女子代表チームは欧州チャンピオンに輝き、2019年のW杯出場を決めた。そして、ネーションズリーグで見せたオランダ代表の復活劇――。どん底からの∨字回復に、サッカー大国オランダの真髄を見た。

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