「お金はゼロでもいいくらい」。乾貴士がスペインでプレーできる喜びを語る (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Michiko Yamamoto ラファ・ウエルタ●撮影 photo by Rafa Huerta

 山あいのバスク地方は降水量が多い。同じスペインでも、首都マドリードのある乾いたカスティージャ地方や、穏やかな地中海地方とは異なる濃い緑が目に突き刺さる。GPSにも住所が表示されないまま、まっすぐ続いていく国道沿いで車を止めて、近所の人に聞いて地図を確認しながらたどり着いたその場所に、スペインリーグ1部唯一のサムライがいた。

日々の練習で競い合うチームメイトについて、乾は「レベルが高い」と語る日々の練習で競い合うチームメイトについて、乾は「レベルが高い」と語る 乾は、エイバルが当時のクラブ史上最高額の移籍金を払って獲得した「スター選手」だ。また、日本人選手で3年契約を最初から手にリーガにやってきた選手も過去にいない。しかし、乾本人はリーガの中では知名度の低いこのエイバルに移籍することについて、不安はなかったのだろうか。

 本人にそう問いかけると「いやもう、即決ですよ、自分の中ではね」と明快な答えが返ってきた。

「昔からスペインリーグは好きだったので。代理人にもスペインのチームを探してほしいと頼んでいました。ドイツに行ったのも、ステップアップのため。スペインに行くためにドイツでやっていました」

 日本を出てボーフムに移籍したのが2011年。まさに5年越しの夢が叶ったことになる。だからこそ「条件とかは関係なかった」と乾は言う。「お金はゼロでもいいくらいの気持ちでした。(契約)期間が何年でも構わなかった。1年でもよかったし、2年でも」と話す乾は、だからこそ、エイバル行きの話を聞いて本当にうれしかったという。

「絶対にスペインでやると決めていましたから」。乾は、日本を出発してからずっと、そんな揺るぎない思いを抱えてきたのだった。

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