「安くても勝てます」。弱小クラブのエンポリがセリエAで大健闘 (2ページ目)

  • 宮崎隆司●取材・文 text by Miyazaki Takashi photo by Getty Images

シーズン当初は降格候補と予想されながら、現在8位と健闘中のエンポリシーズン当初は降格候補と予想されながら、現在8位と健闘中のエンポリ だが、これは言わずもがな、たとえば"ミラネッロ(ミランのトレーニング施設)"や"ラ・ピネティーナ(同インテル)" 、あるいは"ヴィノーヴォ(同ユベントス)"と比べれば雲泥どころの差ではない。練習場は1面のみ。ふたつしかないゴールは昔ながらの鉄製で重く、年季が入っているため程よく赤茶色に錆びている。

 そのゴールを移動させるのはもちろん選手たちの仕事だ。さらに、この練習場の脇に置かれたプレハブの"チケット・オフィス"が、これ以上ないまでに質素、と言うより、はっきり言って粗末。したがって、初めて来た人は間違いなくこんな風に思うだろう。「これが本当にセリエAのクラブの練習場なの?」と。

 しかし、まぎれもなくこれがエンポリのトレーニング施設である。もちろん入場(見学)は自由、ピッチ脇には町の老人たちが幼い孫の手を引いて集まっている。記者証の提示を求められることもない。そもそも記者の数は3、4人で、むしろ老人たちやデート中の若者の方が多い。といっても普段の練習を見に来るファンの数は平均で2、30人程度でしかないのだが......。

 町の人口は4万弱。先日(1月23日の第21節)、遠征で来たミラン一行が試合後にフィレンツェへ移動していることからも分かるように(結果は2−2で引き分け)、いわゆる高級のレベルのホテルさえない静かな田舎町、それがエンポリである。

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