ブンデス再開。ポジション「確保」した酒井宏樹のため息 (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by Getty Images

 酒井は思わずため息をつくとこう答えた。

「もちろんチームにとっても僕にとっても、もう一人の選手っていうのは絶対に必要ですし、この状態が半年続くっていうのは僕にとってもすごく危険だと思います」

 一体、この「危険」とは何を意味するのだろうか?

 ひとつはバックアップの不在だ。以前から酒井は膝に負傷を抱えていたが、代わりとなる選手がいないためにケガを押してでも出場していた。無理に出場することで回復が遅れ、パフォーマンスも低下する。自分がプレイできなくなったら――そんな不安を抱えながらプレイを続けることは、酒井にとって心理的な負担だっただろう。酒井自身も「調子が悪い時も出ないといけない。出続けるってことでやっぱりチームにとっても......」と、その難しさを語っている。

 もうひとつは競争相手の不在だ。「もちろん(試合に)出られるにこしたことはないですけど、競争相手が必要なのは間違いないです」と、酒井は語る。ポジションを争うライバルの存在は競争を生み、双方の選手に成長を促す。争いに敗れればもちろん出場機会を失うことになるが、それでも得られるものは多い。昨季の酒井はそうしたポジション争いで自らを高めることができた。

 実はハノーファーが酒井の競争相手獲得を画策したのは今回が初めてではない。長きにわたってハノーファーの右SBを務め、ケガの影響もあって酒井にポジションを奪われたチェルンドロが昨季シーズン途中に現役引退。チーム唯一の右SBとなった酒井も、後半戦初戦に出場停止処分を受けていたため、ハノーファーは冬の移籍市場でチェコ代表右SBライトラルをレンタル移籍で獲得した。

 一時はライトラルに先発の座を奪われることになったが、そこから酒井はポジションを奪い返してみせた。その後、出場機会を得られなくなったライトラルはシーズン終了後にレンタル元へと戻っていくことになった。結果的にこのポジション争いが酒井を選手として成長させることになった。

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