大波乱のクラシコで表出したレアルとバルサの課題とは?

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko photo by Rafa Huerta

『バルセロナの時代が終わる。ひとつのサイクルの終焉となる』。試合前、マドリード発のスポーツ紙は、そう謳っていた。他のスポーツ紙では、スペイン国内の14メディアにアンケートをとり、レアル・マドリードとバルセロナの詳細を対比チェックするという企画ページを作っていたが、その項目の一つの「カルロ・アンチェロッティ対ヘラルド・マルティノ」の監督対決において、マルティノに軍配を上げたメディアはバルセロナ発のメディアも含めて一つもなかった。

 なんといっても、アンチェロッティは昨年10月のカンプノウでのクラシコこそ黒星を喫したものの、それから31試合連続で無敗記録を更新中だったのだ。一方のマルティノは、ビッグマッチでは勝ちを収めているとはいえ、すでにリーグ戦で3敗を喫しており、それだけでなく、最近の采配があまりにもひねりがないために、非難の声があがっている状況にあった。

 また、フィジカル面でもレアルの選手の方が優れていたし、今回のクラシコでレアルが負けたとしても、勝ち点においてバルセロナより優位な立場にいられることに違いはなかった(クラシコ前の28節終了時点でレアルは勝ち点70。バルサは66)。

 そういったさまざまな条件が揃い、今年は「レアル・マドリード圧倒的有利」のムードが漂っていた。そういったレアルの余裕もあって、ジョゼ・モウリーニョとジョセップ・グアルディオラがチームを率いていた頃に見られた舌戦や、クラシコ特有の不必要なまでに高いテンションもなく、試合当日を迎えたのである。

 ところが、蓋(ふた)をあけてみると、アウェー戦で4か月間先制点をマークしていなかったバルサが、イニエスタのエリア外からのシュートで先制。すると、負傷から戻ってきたばかりで万全ではないと言われていたレアルのFWベンゼマが、4分間に2得点を決めてレアルが逆転と、一気に乱打戦の様相に。

 そのままホームのレアル有利で試合が展開するかと思いきや、前半終了間際にメッシが同点弾をマークするシーソーゲームに突入。さらに、後半はシュート体勢に入っていたネイマールにファウルを犯したセルヒオ・ラモスが一発レッドで退場処分を受けた場面を皮切りに、3回に渡って両チームにPKが与えられ(バルサ2回、レアル1回)、試合を通して8枚のイエローカード(レアルに7枚、バルサに1枚)が出されるという近年稀(まれ)に見る大波乱のクラシコとなった。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る