CL台風の目。数字が証明するPSGとアトレティコの強さ (3ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 一方、これとは180度異なるチームカラーで旋風を巻き起こしているのが、スペインのアトレティコ・マドリードだ。パリ・サンジェルマンと違って、メンバー的にはスター選手と呼べる選手は皆無だが、地味ながらどのポジションにも好選手を揃えているのが強みと言える。

 実際、決勝トーナメント1回戦ではミランをまったく寄せ付けず、2試合合計5-1のスコアで完勝したことを“波乱”と見る人はいないはずだ。その現実的なサッカーを見て、パリ・サンジェルマンよりも警戒している強豪チームの指揮官も多い。

 シメオネ監督率いるアトレティコ・マドリードの最大の特長は、鉄壁とも言われる守備力と、素早い縦への攻撃にある。とりわけ、監督の現役時代の如く、選手全員が労を惜しまずハードワークを続けるところは圧巻。まるで、監督の血がピッチ上の選手に通っているかのようなスタイルだ。

 ただし、それはあくまでも見た目の話であって、やはりアトレティコ・マドリードの本質は確固たるフィロソフィーであり、それを実践するための戦術的成熟度の高さがバックボーンとなっている。

 たとえば、アトレティコはボール支配率を意識していない。これまで8試合で成功したパスは4269本で、パス成功率は71%。そのパス成功本数は今シーズンの出場32チーム中12番目(グループリーグで敗退し、6試合で終えたチームを含めての数字である)、パス成功率では24番目の数字。しかしその一方で、ゴール数はバイエルンやバルセロナと同じ20ゴールをマークしているのだ。

 これこそ「シメオネ・スタイル」を象徴するものであり、リスクの高い縦パスを効果的に使いながら最短距離でゴールを目指すスタイルが、いかにチームに浸透しているかを示すデータと言える。そして、これを実践できている最大の要因は、前線から始まる組織的な守備にある。

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