ミランの監督に就任したセードルフは、新しい儀式を取り入れた

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】ミラン監督に就任したセードルフの素顔(後編)

 ACミランだけは、つねにクラレンス・セードルフのことを理解していた。ミランにはフットボール界で最高のメディカルセンター「ミラン・ラボ」がある。ここで行なったテストで、セードルフのデータはフィジカルでもメンタルでもあらゆる選手を上回っていた。おまけに筋肉がしっかりついていたので、ウエートトレーニングを禁止されたという。

ミランのクラレンス・セードルフ監督(右)とガリアーニCEO(BUZZI/FOOTBALL PRESS)ミランのクラレンス・セードルフ監督(右)とガリアーニCEO(BUZZI/FOOTBALL PRESS) ミラン・ラボのスポーツ心理学者ブルーノ・デ・ミケリスは、セードルフの言葉をさまざまな側面から分析した。すると、セードルフは人をいら立たせることも多いが、彼の発言は周りを助けようとしているという結論に達した。「彼の発言は選手としてのものが10%。70%は監督、残りの20%はGMのようだ」と、デ・ミケリスは言った。彼はミランの選手やコーチたちに、セードルフには自由に発言させるよう頼んだ。

 セードルフは自身3度目と4度目となるチャンピオンズリーグ制覇を、ミランで果たした。2012年には36歳でブラジルのボタフォゴへ移籍し、ブラジルでプレイする初のトップレベルのヨーロッパ人選手となった(セードルフの妻はブラジル人で、ポルトガル語は彼が流ちょうに話せる5ヵ国語のうちのひとつだ)。ボタフォゴでは若い選手たちのなかで、すぐに司令塔とチームリーダーになった。

 セードルフがミランから監督に指名され、早々にイタリアへ出発すると決まったときには、ボタフォゴの多くのチームメイトとスタッフが泣いた。ブラジルのスポーツ紙ランスは、セードルフの「洗練、礼儀、思いやり、そしてプロ意識」をたたえた。

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